改訂新版 世界大百科事典 「張子細工」の意味・わかりやすい解説
張子細工 (はりこざいく)
近世では張貫(はりぬき)とも称する。木彫りの人形などの原型のまわりに,紙を幾重にものりではり,のちにこれをきり割って原型をとり出してはり合わせ,もとの形に復して描彩を施したもの。奈良時代の仏像製作にみられる乾漆の技法と基本的に同じであるから,伝来は古いと思われる。平安時代末期には祓(はらい)に用いる何かの具を張子で作ったものがあったらしい。室町時代には起上り小法師などが製作されて売られた。江戸時代になると,だるまや虎をはじめ種々な品が作られた。ことに江戸時代後期には,全国各地で泥人形に次いで,張子の玩具が作られ,だるま,お面,首ふり虎,獅子頭(ししがしら),鯛(たい)車,犬張子,福助などが流行した。関西では張子製の市松人形も作られた。今日では不燃性セルロイドやビニル製のものに代わったが,張子製玩具は郷土玩具としてなお残っている。福島県の三春は張子の名産地として知られ,文化・文政(1804-30)期から盛んに作られた。江戸期ほど多く作られていないが,今日も三春張子にはだるま,首ふり虎,兎,俵牛(俵を負った牛),お面(天狗,お亀),姫,獅子頭,天神,三味線をもつ女などがある。だるま,姫はこの地方で養蚕のお守りとされたが,他の玩具にも何かの縁起が付会されていた。張子細工は小箱などの製作などにも用いられた。
執筆者:山田 徳兵衛
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報