強直性脊椎炎(読み)きょうちょくせいせきついえん(英語表記)ankylosing spondylitis

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

強直性脊椎炎
きょうちょくせいせきついえん
ankylosing spondylitis

慢性に進行する原因不明の多発性の関節炎。靭帯付着部の炎症性変化を特徴とし,腰背部の痛みが特に夜間早朝に強くなる。一般に仙腸関節,腰椎椎間関節からって上部脊椎椎間関節に広がり,進行すると脊椎靭帯も骨化し,脊椎の骨性強直を起し,脊柱のように動かなくなり,後彎が強まってくる。脊椎肋骨関節,胸鎖関節,さらにはなどの関節に強直が起ることもある。 20~40歳代の男性に多く,女性にはまれである。

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家庭医学館の解説

きょうちょくせいせきついえん【強直性脊椎炎 Ankylosing Spondylitis】

[どんな病気か]
 脊椎や骨盤(こつばん)の関節部が、しだいに骨化(こつか)あるいは線維化して、骨と骨が癒着(ゆちゃく)してしまう(強直)病気です。肩、股(また)、膝(ひざ)などの胴体に近い大きな関節にも癒合(ゆごう)がおこり、進行すれば、からだをほとんど動かせなくなってしまいます。発生頻度は1万人に5~6人で、男7~9対女1と、圧倒的に男性に多い病気です。
 原因は不明ですが、関節リウマチの6%に強直性脊椎炎がみられ、そのうちの90%にHLA‐B27というリンパ球組織適合抗原(こうげん)がみられることから、発病しやすい素因があるものと考えられています。
[症状]
 多くは10歳代後半から20歳代に症状が現われます。初めは、背中や腰が重苦しく感じる程度で、朝の起床時や同じ姿勢を長く続けたときに、筋肉痛のような痛みが腰背部(ようはいぶ)におこりますが、動いているうちに、感じなくなります。
 そのうち、痛みや筋肉の硬直が腰の中央部に集中し、片方や両方の下肢(かし)(脚(あし))に坐骨神経痛(ざこつしんけいつう)のような放散痛(ほうさんつう)がおこることもありますが、椎間板(ついかんばん)ヘルニアのように、前にかがんだり、脚を伸ばして上げたときに強く痛むということはありません。
 進行すると、腰はしだいに強直し、放置すれば発症から1~2年で、背骨(せぼね)をどの方向にも動かせないほどかたくなってしまいます。重症になると、頸椎(けいつい)から腰椎(ようつい)までほとんどすべての脊椎が癒合し、股関節(こかんせつ)や肩関節、さらには顎(あご)の関節まで強直してしまい、からだは1本の棒のようになります。
[検査と診断]
 強直性脊椎炎の初期には的確な診断はむずかしく、腰痛症(ようつうしょう)、坐骨神経痛などと診断されていることが多いようです。
 強直性脊椎炎の特徴は、本来前弯(ぜんわん)しているはずの腰椎が伸びていることと、骨盤の仙腸関節部(せんちょうかんせつぶ)(仙骨(せんこつ)と腸骨(ちょうこつ)が接しているところ)を前や横から押すニュートン検査で痛みがおこることです。
 X線検査では、初期には仙腸関節の変化や、その周囲の骨が萎縮(いしゅく)しているのがみられます。進行したものでは、仙骨と腸骨が完全に癒合し、脊椎のまわりの靱帯(じんたい)も骨化して、脊柱(せきちゅう)はちょうど竹の節のように見えます。
 血液検査では血沈(けっちん)が亢進(こうしん)します。CRPテスト(血清(けっせい)中のC反応性たんぱくの有無を調べる。関節リウマチなどの炎症性疾患があると陽性のことが多い)は陽性で、血清中にリウマチ因子はみられないのがふつうです。
[治療]
 原因不明の病気であるため、進行を止めることはむずかしく、治療は対症療法になります。
 痛みは、ジクロフェナク、インドメタシンなどの消炎鎮痛薬で、ある程度おさまります。また、四肢(しし)(手足)が曲がったままになるのを防ぐため、水泳や棒体操、機能訓練を積極的に行ない、全身を動かすこともたいせつです。
 完全に強直してしまった場合、股関節に人工関節を入れることもありますが、脊椎や他の関節にも強直がある場合には、立つことも歩くこともできなくなってしまうことが多いものです。

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六訂版 家庭医学大全科の解説

強直性脊椎炎
きょうちょくせいせきついえん
Ankylosing spondylitis
(運動器系の病気(外傷を含む))

どんな病気か

 脊椎の靭帯(じんたい)・腱が骨に付着する部分や椎間板(ついかんばん)椎体(ついたい)に付着する部分、椎間関節の炎症により、脊柱の椎体間に癒合(ゆごう)が生じて脊柱の運動制限を来す病気です。欧米人に比べて日本人には少なく、男性に多く、家族内での発生が多いとされています。

原因は何か

 リウマトイド因子が陰性の関節疾患である血清反応陰性脊椎関節症のひとつですが、原因は明らかになっていません。近年、強直性脊椎炎とHLA­B27というヒト白血球抗原との間に密接な関係があるといわれています。

症状の現れ方

 通常、仙腸(せんちょう)関節炎による腰痛、臀部(でんぶ)痛、腰背部のこわばり感などの症状から始まります。症状の進行とともに胸椎の椎体と肋骨も骨癒合するため、深呼吸時の胸部痛が現れます。その他、股関節、膝関節、アキレス腱部の痛みが出る場合もあります。

 最終的には、脊椎全体が強直するため脊椎の動きが失われます。

検査と診断

 単純X線写真における最初の変化は仙腸関節に生じることが多く、骨硬化像、関節裂隙(れつげき)(関節のすきま)の狭小化がみられ、最終的には骨性に癒合します。

 脊柱の変化はまず腰椎に生じ、椎体の前面部が直線化し、椎間板腔の狭小化、前縦(ぜんじゅう)靱帯の骨化や骨棘(こつきょく)形成による椎体間の架橋(かきょう)が形成されます。最終的には椎体はお互いに竹筒状になり、強直が完成します。これを竹様(ちくよう)脊柱(bamboo spine)といいます。

 また、血液検査ではHLA­B27が陽性になり、CRPという炎症反応が陽性になりますが、リウマトイド因子が陰性であることが特徴です。

治療の方法

 この病気に対する根本的な治療法はありません。脊柱が変形することを予防するため、正しい姿勢を維持することに注意し、脊柱や股関節などの四肢関節の可動性を保つための運動療法を行います。

 薬物療法として非ステロイド性の抗炎症薬も投与されますが、根本的な治療薬ではなく、対症療法に過ぎません。

 脊柱の変形が進み、後弯(こうわん)変形が高度になった場合には、脊柱の骨切り術を行うこともあります。

病気に気づいたらどうする

 整形外科を受診し、画像検査や血液検査で確定診断をつけます。強直性脊椎炎と診断された場合、竹様脊柱のような末期の状態にならないよう早期に治療を開始することがすすめられます。

朝妻 孝仁

強直性脊椎炎
きょうちょくせいせきついえん
Ankylosing spondylitis
(膠原病と原因不明の全身疾患)

どんな病気か

 脊椎(背骨)が強直する(連続的に融合する)特徴をもつ病気です。しかし、これはかなり後期にみられる症状で、病気の初期から一貫してみられるのはむしろ、骨盤にある仙腸(せんちょう)関節の炎症です。炎症が最初に現れる部位は、骨に付着する靭帯(じんたい)および関節包(かんせつほう)(靭帯付着部炎)、関節近くの靭帯組織、滑膜(かつまく)、関節軟骨などで、進行すると徐々に線維性および骨性の強直を引き起こします。

 この病気の発生頻度は人種により異なり、白人では0.2%、日本人では0.007~0.04%とされています。男女比は12対1と男性に多く、10~35歳に多発し、40歳以上の発症はまれです。

原因は何か

 原因は現在も不明ですが、白血球の血液型でHLA­B27陽性の人に高率にみられます。日本では一般人口でのHLA­B27陽性者は0.1~0.5%程度ですが、この病気の患者さんの80~90%以上がHLA­B27陽性で、何らかの関連が考えられています (コラム・HLA­B27と体の病気)。

症状の現れ方

 主な症状には全身症状、骨格症状、骨格外症状があります。

 全身症状は、初期に体重減少、食欲不振、疲労感、発熱、貧血などが起こります。

 骨格症状は、徐々にあるいは突然、腰背部痛(ようはいぶつう)が現れます。長い安静後に悪化し、軽度の運動で改善します(表12)。靭帯付着部炎による、関節外あるいは関節近くの骨の圧痛が病気の初期にみられます。また、股関節や肩関節など躯幹(くかん)に近い部位の関節に痛みや運動制限が起こります。胸部に起こるさまざまな関節炎のため、胸郭(きょうかく)を十分拡張できないことに気づく患者さんもいます。

 関節症状が進行すると、最終的には強直になります。脊柱に強直の変化が進行すると、脊柱全体に運動制限が現れ、前屈みなどの動作が困難になります。

 骨格外症状としては、眼に現れる急性虹彩炎(きゅうせいこうさいえん)(急性前部ぶどう膜炎)があります。また大動脈弁閉鎖不全(だいどうみゃくべんへいさふぜん)を起こしたり、まれですが脊椎骨折(せきついこっせつ)頸椎(けいつい)の骨折・亜脱臼(あだっきゅう)による神経症状を起こすこともあります。

検査と診断

 血液検査では、活動期に入ると赤血球沈降速度やCRPなど炎症を示す数値が高くなります。リウマトイド因子や抗核抗体などは陰性ですが、前述したように、HLA­B27は高率で陽性になります。X線検査では、仙腸関節炎や脊椎の変化が特徴的にみられます。早期例ではMRIも有用です。とくに後期には、脊椎が骨性に連続し、竹の節状になります。

 診断は、いくつかの診断基準がつくられているので、これらも参考にしながら行います(表13)。

治療の方法

 痛みを和らげる治療と運動療法が基本的な治療になります。運動によって疼痛、こわばりを軽減し、不都合な位置での強直を防ぎます。薬物療法では、非ステロイド性抗炎症薬(いわゆる消炎鎮痛薬)が中心になります。関節炎の強い患者さんには、サラゾスルファピリジン、メトトレキサートなどの抗リウマチ薬が有効です。非ステロイド性抗炎症薬の効果が不十分あるいは無効のときは生物学的製剤が有効ですが、まだ日本では認可されていません。

 骨格外症状がみられる場合には、その治療も必要になります。整形外科的な治療としては、脊柱変形には骨切り術、関節強直には人工関節置換術(ちかんじゅつ)などが行われることもあります。

病気に気づいたらどうする

 早めにかかりつけ医に相談し、専門医を受診して、診断を確定します。治療が開始されたら、医師と相談しながら指示を守ることが重要です。この病気は寛解(かんかい)と再燃を繰り返すので、炎症が強い時は鎮痛薬を服用し、安静にします。ただし背骨や関節を固まらせないためには、適切な体操や深呼吸運動が必要です。

 背骨を骨折すると、脊髄(せきずい)の神経損傷を生じることがあるので、外傷や事故などに注意することが重要です。

関連項目

 HLA­B27と体の病気(コラム)、ライター症候群(コラム)、乾癬性関節炎

吉田 俊治


出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報