家庭医学館 「強直性脊椎炎」の解説
きょうちょくせいせきついえん【強直性脊椎炎 Ankylosing Spondylitis】
脊椎や骨盤(こつばん)の関節部が、しだいに骨化(こつか)あるいは線維化して、骨と骨が癒着(ゆちゃく)してしまう(強直)病気です。肩、股(また)、膝(ひざ)などの胴体に近い大きな関節にも癒合(ゆごう)がおこり、進行すれば、からだをほとんど動かせなくなってしまいます。発生頻度は1万人に5~6人で、男7~9対女1と、圧倒的に男性に多い病気です。
原因は不明ですが、関節リウマチの6%に強直性脊椎炎がみられ、そのうちの90%にHLA‐B27というリンパ球組織適合抗原(こうげん)がみられることから、発病しやすい素因があるものと考えられています。
[症状]
多くは10歳代後半から20歳代に症状が現われます。初めは、背中や腰が重苦しく感じる程度で、朝の起床時や同じ姿勢を長く続けたときに、筋肉痛のような痛みが腰背部(ようはいぶ)におこりますが、動いているうちに、感じなくなります。
そのうち、痛みや筋肉の硬直が腰の中央部に集中し、片方や両方の下肢(かし)(脚(あし))に坐骨神経痛(ざこつしんけいつう)のような放散痛(ほうさんつう)がおこることもありますが、椎間板(ついかんばん)ヘルニアのように、前にかがんだり、脚を伸ばして上げたときに強く痛むということはありません。
進行すると、腰はしだいに強直し、放置すれば発症から1~2年で、背骨(せぼね)をどの方向にも動かせないほどかたくなってしまいます。重症になると、頸椎(けいつい)から腰椎(ようつい)までほとんどすべての脊椎が癒合し、股関節(こかんせつ)や肩関節、さらには顎(あご)の関節まで強直してしまい、からだは1本の棒のようになります。
[検査と診断]
強直性脊椎炎の初期には的確な診断はむずかしく、腰痛症(ようつうしょう)、坐骨神経痛などと診断されていることが多いようです。
強直性脊椎炎の特徴は、本来前弯(ぜんわん)しているはずの腰椎が伸びていることと、骨盤の仙腸関節部(せんちょうかんせつぶ)(仙骨(せんこつ)と腸骨(ちょうこつ)が接しているところ)を前や横から押すニュートン検査で痛みがおこることです。
X線検査では、初期には仙腸関節の変化や、その周囲の骨が萎縮(いしゅく)しているのがみられます。進行したものでは、仙骨と腸骨が完全に癒合し、脊椎のまわりの靱帯(じんたい)も骨化して、脊柱(せきちゅう)はちょうど竹の節のように見えます。
血液検査では血沈(けっちん)が亢進(こうしん)します。CRPテスト(血清(けっせい)中のC反応性たんぱくの有無を調べる。関節リウマチなどの炎症性疾患があると陽性のことが多い)は陽性で、血清中にリウマチ因子はみられないのがふつうです。
[治療]
原因不明の病気であるため、進行を止めることはむずかしく、治療は対症療法になります。
痛みは、ジクロフェナク、インドメタシンなどの消炎鎮痛薬で、ある程度おさまります。また、四肢(しし)(手足)が曲がったままになるのを防ぐため、水泳や棒体操、機能訓練を積極的に行ない、全身を動かすこともたいせつです。
完全に強直してしまった場合、股関節に人工関節を入れることもありますが、脊椎や他の関節にも強直がある場合には、立つことも歩くこともできなくなってしまうことが多いものです。