六訂版 家庭医学大全科 「強直性脊椎炎」の解説
強直性脊椎炎
きょうちょくせいせきついえん
Ankylosing spondylitis
(膠原病と原因不明の全身疾患)
どんな病気か
脊椎(背骨)が強直する(連続的に融合する)特徴をもつ病気です。しかし、これはかなり後期にみられる症状で、病気の初期から一貫してみられるのはむしろ、骨盤にある
この病気の発生頻度は人種により異なり、白人では0.2%、日本人では0.007~0.04%とされています。男女比は12対1と男性に多く、10~35歳に多発し、40歳以上の発症はまれです。
原因は何か
原因は現在も不明ですが、白血球の血液型でHLAB27陽性の人に高率にみられます。日本では一般人口でのHLAB27陽性者は0.1~0.5%程度ですが、この病気の患者さんの80~90%以上がHLAB27陽性で、何らかの関連が考えられています (コラム・HLAB27と体の病気)。
症状の現れ方
主な症状には全身症状、骨格症状、骨格外症状があります。
全身症状は、初期に体重減少、食欲不振、疲労感、発熱、貧血などが起こります。
骨格症状は、徐々にあるいは突然、
関節症状が進行すると、最終的には強直になります。脊柱に強直の変化が進行すると、脊柱全体に運動制限が現れ、前屈みなどの動作が困難になります。
骨格外症状としては、眼に現れる
検査と診断
血液検査では、活動期に入ると赤血球沈降速度やCRPなど炎症を示す数値が高くなります。リウマトイド因子や抗核抗体などは陰性ですが、前述したように、HLAB27は高率で陽性になります。X線検査では、仙腸関節炎や脊椎の変化が特徴的にみられます。早期例ではMRIも有用です。とくに後期には、脊椎が骨性に連続し、竹の節状になります。
診断は、いくつかの診断基準がつくられているので、これらも参考にしながら行います(表13)。
治療の方法
痛みを和らげる治療と運動療法が基本的な治療になります。運動によって疼痛、こわばりを軽減し、不都合な位置での強直を防ぎます。薬物療法では、非ステロイド性抗炎症薬(いわゆる消炎鎮痛薬)が中心になります。関節炎の強い患者さんには、サラゾスルファピリジン、メトトレキサートなどの抗リウマチ薬が有効です。非ステロイド性抗炎症薬の効果が不十分あるいは無効のときは生物学的製剤が有効ですが、まだ日本では認可されていません。
骨格外症状がみられる場合には、その治療も必要になります。整形外科的な治療としては、脊柱変形には骨切り術、関節強直には人工関節
病気に気づいたらどうする
早めにかかりつけ医に相談し、専門医を受診して、診断を確定します。治療が開始されたら、医師と相談しながら指示を守ることが重要です。この病気は
背骨を骨折すると、
関連項目
HLAB27と体の病気(コラム)、ライター症候群(コラム)、乾癬性関節炎
吉田 俊治
強直性脊椎炎
きょうちょくせいせきついえん
Ankylosing spondylitis
(運動器系の病気(外傷を含む))
どんな病気か
脊椎の
原因は何か
リウマトイド因子が陰性の関節疾患である血清反応陰性脊椎関節症のひとつですが、原因は明らかになっていません。近年、強直性脊椎炎とHLAB27というヒト白血球抗原との間に密接な関係があるといわれています。
症状の現れ方
通常、
最終的には、脊椎全体が強直するため脊椎の動きが失われます。
検査と診断
単純X線写真における最初の変化は仙腸関節に生じることが多く、骨硬化像、関節
脊柱の変化はまず腰椎に生じ、椎体の前面部が直線化し、椎間板腔の狭小化、
また、血液検査ではHLAB27が陽性になり、CRPという炎症反応が陽性になりますが、リウマトイド因子が陰性であることが特徴です。
治療の方法
この病気に対する根本的な治療法はありません。脊柱が変形することを予防するため、正しい姿勢を維持することに注意し、脊柱や股関節などの四肢関節の可動性を保つための運動療法を行います。
薬物療法として非ステロイド性の抗炎症薬も投与されますが、根本的な治療薬ではなく、対症療法に過ぎません。
脊柱の変形が進み、
病気に気づいたらどうする
整形外科を受診し、画像検査や血液検査で確定診断をつけます。強直性脊椎炎と診断された場合、竹様脊柱のような末期の状態にならないよう早期に治療を開始することがすすめられます。
朝妻 孝仁
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報