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直観主義 ちょっかんしゅぎintuitionism

翻訳|intuitionism

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

直観主義
ちょっかんしゅぎ
intuitionism

哲学および数学上の用語。哲学においては,直観を認識の基本とする理論をいうが,直観の定義によってさまざまに異なる。現在直観主義は大きく2方面から考えられる。すなわち,直観を真理把握,価値判断の根本的機能としながら,それを知的直観と感性的直観に分つ立場 (フィヒテシェリングなど) と,反省や概念などの一切の主知的要素を排し,存在の把握は直観,体験によってのみ可能とする立場 (ベルグソンが代表的) である。この2つの立場は美学や倫理学においてもさまざまに主張されている。数学上の直観主義とは,オランダの数学者 L.ブローウェルによって主張された数学基礎論の一立場をいう。彼は数学は論理の法則に従って推理するものではなく,数学的直観によって進められるべきであり,論理法則こそが直観から逆に帰納されるべきであると主張した。これは H.ワイルによって発展させられ,論理学のうえに数学を基礎づけようとするフレーゲラッセルラムゼーなどの論理主義と鋭く対立している。

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デジタル大辞泉の解説

ちょっかん‐しゅぎ〔チヨククワン‐〕【直観主義】

intuitionism》哲学で、概念的思惟よりも直観に優位を認める立場。直覚主義。
㋐真理・存在の把握は直観によってのみ可能であるとする立場。ベルグソンの哲学など。
㋑道徳的価値判断の成立の基礎を直観に求める立場。
数学の基礎理論の立場の一。ラッセルの論理主義やヒルベルト形式主義に対立し、数学は直観に導かれて成立するものであるとする立場。ブラウアーに始まる。

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世界大百科事典 第2版の解説

ちょっかんしゅぎ【直観主義 intuitionism】

L.E.J.ブローエルによって提唱された数学基礎論における立場をいう。数学を単に形式的な論理的演繹の体系と考える形式主義や論理主義に対して,直観に基づく精神活動によって直接にとらえられるものとして数学を再構築しようというもの。たとえば,〈性質p(x)を満たすようなxの存在〉を示すのに,〈いかなるxに対しても,p(x)ではない〉ことを仮定して矛盾を導くという論法が数学でしばしば用いられるが,xが無限の対象を動く場合には必ずしも明白なものとは認められない。

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大辞林 第三版の解説

ちょっかんしゅぎ【直観主義】

認識に関して、思惟よりも直観を重視する立場。
倫理学で、善悪の道徳的判断は理性ではなく情緒的・知的直観によって可能となるとする説。功利主義とともにイギリス倫理学説の底流をなす。直覚説。
〘数〙 数学基礎論で、ヒルベルトらの形式主義に対抗し、数学的直観が数学を導くと考えるブラウアーらの立場。排中律の機械的な使用を認めないなど、通常の論理と多少異なる。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

直観主義
ちょっかんしゅぎ

数学の基礎に関する一つの立場である。数学を単に形式的な論理的演繹(えんえき)体系とみなす形式主義に対し、直観主義では、数学的真理や対象が、数学を考えていく意味や内容によって直接にとらえられるものであるという考えにたつ。直観主義の先駆者としては、古くはL・クロネッカーとH・ポアンカレをあげることができる。数学を根本から直観主義的に再構成しようと最初に試みたのはブラウアーLuitzen Egbertus Jan Brouwer(1881―1966)である。彼は形式主義を掲げるヒルベルトと激しく論争を続けた。現在、直観主義という語は、このブラウアーの伝統を引く数学の一分野をさすことが多い。
 ブラウアーは1908年に、アリストテレス以来の古典論理の法則に批判を投げかけた。彼は、「AかAの否定が成り立つ」ことをすべての命題Aについて正しいとする排中律を認めない。たとえば、排中律「集合Sには、性質Pをもつ元が存在するか存在しないかいずれかである」という命題Mを考える。いま、集合Sのおのおのの元について、それが性質Pをもつか否かを決定できるものと仮定しよう。Sが有限集合ならば、Sの各元について性質Pをもつかどうかを調べ尽くすことができ、Mが成り立つことがわかる。しかし、このようなPについても、Sが無限集合のときには事情が違う。すなわち、Sの無限個の各元が性質Pをもつか否かを調べ尽くすことはできない。確かめていって、性質Pをもつ元をみつければ、命題Mは実証される。しかし、そのような元をまだみつけていないときには、Sには性質Pをもつ元が存在しないのか、あるいは、存在するのにまだみつけていないのかを知ることはできない。ブラウアーは、排中律「AかAの否定」は、AかAの否定のうちのどちらか一方が正しいことがわかったときにのみ正しいのであって、前出の無限集合Sの場合には、排中律を、論理の普遍的に正しい法則としては認めない。同様に、「与えられた性質をもつ対象が存在する」ということは、そのような対象をみつけるか、あるいはそのような対象を構成する方法が与えられたときにだけ証明されたものと認める。したがって、「存在しない」という仮定から矛盾を導いて「存在する」ことを間接的に導くような証明を認めない。これは、命題Aの否定の否定(二重否定)からAを導くことを拒否することにつながる。こうした考え方は、その後多くの数学者たちからも受け入れられた。
 ブラウアーは、直観主義の立場から、解析学や集合論を展開したが、従来の数学とは非常に違い、また実際の数学の理論に適用するにはあまりにも複雑なものとなった。しかし、彼の考え方は、数学の基礎の研究には重要な役割を演じた。また、彼の用いた論理は、その後、直観主義論理として整理され、現在も重要な研究対象である。フランスのボレルやルベーグらも、直観主義的立場からの数学批判をする学者であるが、その議論の基礎にある諸概念の分析に、経験主義的な考え方をも取り入れているので、半直観主義とかフランス経験主義とかよばれている。[西村敏男]

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世界大百科事典内の直観主義の言及

【数学基礎論】より

…L.E.J.ブローエルは,数学的真理や対象は数学を考える精神とかかわりなく存在するとはせず,経験的・直観的精神活動によって直接にとらえられるものであって,実際に構成できる対象だけが数学的存在であると主張する。ブローエルが提唱した立場は直観主義と呼ばれ,この立場では排中律は一般には成り立たないものとされる。ススリンM.J.Souslinによる解析集合(ボレル集合の拡張)の発見(1917)を端緒として,ルージンN.N.LuzinやシェルピンスキW.Sierpińskiらが精力的に解析集合論,一般に記述集合論と呼ばれる分野の研究に着手したのもこの時代である。…

【数理哲学】より

…この派の主張は数学を論理学に還元するというものにほかならない。次は直観主義であり,オランダの数学者ブローエルを始祖とし,ハイティングA.Heytingその他の後継者が研究を進めている。これは数学を広義の直観に帰着せしめようとする。…

※「直観主義」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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