形状記憶合金(読み)ケイジョウキオクゴウキン

デジタル大辞泉 「形状記憶合金」の意味・読み・例文・類語

けいじょうきおく‐ごうきん〔ケイジヤウキオクガフキン〕【形状記憶合金】

成形後、一定温度変化で別の形状になり、温度が元に戻ると元の形状に戻る性質をもつ合金チタンニッケル合金、銅‐亜鉛アルミニウム合金など。温度センサーなどに使用

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精選版 日本国語大辞典 「形状記憶合金」の意味・読み・例文・類語

けいじょうきおく‐ごうきんケイジャウガフキン【形状記憶合金】

  1. 〘 名詞 〙 低温で塑性変形させ、これを高温にすると、塑性変形前の形に戻り、再び低温に戻すと、もとの変形された形になるといった種の合金。チタン・ニッケル合金、銅・亜鉛・アルミニウム合金など。

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化学辞典 第2版 「形状記憶合金」の解説

形状記憶合金
ケイジョウキオクゴウキン
shape-memory alloy

変形しても加熱などの適当な処理により原形を復元する合金.Cu-Al-Ni,Fe-Mn-Siなどいくつかの合金系で形状記憶効果が確認されているが,ほぼ1:1組成をもつTi-Ni合金がもっとも有名である.通常,金属材料の変形は転位の運動にもとづく塑性変形であるが,形状記憶合金では高温で安定な母相から低温で安定な相への変態が,原子拡散を伴うことなく結晶全体が連携を保ち,せん断的に動くマルテンサイト変態を利用している.すなわち,高温相である母相をある形状を保ち冷却すると,原子の拡散を伴うことなく低温相にマルテンサイト変態する.このとき母相とは同等な方位関係をもつが,個々には方位の異なる複数のバリアント(兄弟晶)が発生し,外形をかえることなく低温相となる.低温相状態で応力を加えると複数存在する低温相のうち,応力を緩和する方位のバリアントが成長し外形変化が起こる.これを加熱すると変態により母相に戻り,形状回復を起こす.このようにマルテンサイト変態を利用する形状記憶合金では,変形前後であっても原子の相対的な位置関係は変化せず,変態によって形状が回復することになる.

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「形状記憶合金」の意味・わかりやすい解説

形状記憶合金
けいじょうきおくごうきん
shape memory alloys

室温(あるいは低温)で変形させても、加熱すると変形前の形に戻る性質をもつ合金。ある種の銅‐亜鉛‐アルミニウム合金、銅‐アルミニウム‐ニッケル合金、ニッケル‐チタン合金(代表例ニチノール)などでは、その組織は常温(あるいはより低温)で不安定であり、外力を加えられると別の原子配列(マルテンサイト相)に変わる。この相はある温度以下でしか安定ではないので、加熱する(あるいは室温に戻す)と元の原子配列(母相)に戻る。その際、力が加わって変形したのとちょうど逆の変形が自動的におこり、材料の形も変形前の元の形に戻る。つまり、この材料は加工される前の自分の形を記憶していたことになる。この種の合金は形状記憶のほかにも、著しく大きい弾性(ゴム弾性)や、優れた震動吸収性(防震特性)などを示す。どの程度まで変形しても元の形に戻るか、あるいはどの程度の力が得られるかなどは合金により異なり、それぞれの特徴を生かした利用が開発されつつある。おもな利用例としては、人間が直接作業することがむずかしい位置にあるチューブパイプの締め付けや接続、電源の継手、温度制御器などがある。さらに歯列矯正や生体内クリップなどにも利用されている。

[及川 洪]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「形状記憶合金」の意味・わかりやすい解説

形状記憶合金
けいじょうきおくごうきん
shape-memory alloy

変形を加えた後,それをある温度以上に加熱すると,一瞬にして変形前の形状に復帰する合金。実用化されている合金には,ニッケル-チタン合金,銅-アルミニウム-ニッケル合金,銅-亜鉛-アルミニウム合金 (ベータロイ) があり,いずれも熱的に可逆的な変化を示す相転移 (相変態,マルテンサイト変態と呼ぶ) を利用している。ニッケル-チタン合金は「ニチノール」の商品名をもつ代表的な形状記憶合金であり,耐食性,耐熱性,耐摩耗性が良好だが,高価である。最近,ステンレス系鉄基合金も開発され,耐食性や低価格の点で注目されている。温度によって形が変わる性質を利用して,温室の自動天窓開閉器,ボイラの温度湯量調節器,ブラジャーなどに利用されている。また,研究開発中の応用例として,心臓ポンプ,火災時の防火扉の開閉,温度センサ,人工関節などがある。

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百科事典マイペディア 「形状記憶合金」の意味・わかりやすい解説

形状記憶合金【けいじょうきおくごうきん】

形状記憶効果を示す合金。ニッケル‐チタン合金,銅‐亜鉛‐アルミニウム合金などがある。また,従来にない新しい機能をもつ機能性材料としてパイプの継手,温度感知器や温度調節器,人工腎臓用の弁からブラジャーの形状保持まで,熱エネルギーを機械的エネルギーに変える特性を生かした応用・研究が盛んである。
→関連項目チタン合金知能材料

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知恵蔵 「形状記憶合金」の解説

形状記憶合金

ある温度以下で変形しても、その合金に固有の温度以上に加熱すると、元の形に戻る合金。マルテンサイト変態に伴って起こる現象で、いろいろな合金に見られる。ニチノール(ニッケル‐チタン合金)の特性が特に優れており、パイプの継ぎ手、温度感知作動器などに応用される。

(岡田益男 東北大学教授 / 2007年)

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世界大百科事典(旧版)内の形状記憶合金の言及

【形状記憶効果】より

…しかるに熱弾性型のマルテンサイト変態をする合金では,加熱に際し逆変態が存在し,それが結晶学的に可逆的であるためこのような性質が現れる。このような性質を示す合金(形状記憶合金)には,Ni‐Ti,Cu‐Al‐Ni,Cu‐Zn,Cu‐Zn‐Al,Ni‐Al合金等があり,とくにNi‐Ti合金は,強度,靱性(じんせい),耐食性,耐摩耗性にも著しく優れているため,すでに実用材として利用され,〈ニチノールNitinol〉という商品名で知られている。形状記憶合金は従来の金属にない性質をもった合金であるため,最近新しい機能性材料として,パイプの継手,温度感知器あるいは温度調節器,熱エネルギーの機械的エネルギーへの変換機(固体エンジン),人工腎臓用の弁等,幅広く利用されつつある。…

※「形状記憶合金」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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