皇太子の居所。転じて皇太子の称ともなる。東は、四季に配すれば春にあたり、色に配すれば青にあたるので、春宮(とうぐう)とも青宮(せいきゅう)とも称し、さらに皇位継承者の意味から、儲君(ちょくん)、ひつぎのみこ、もうけのきみなどともいう。本来、皇嗣(こうし)と定められた者は、皇子または皇孫、あるいは皇兄弟その他の皇親であっても、すべて皇太子と称すべきであるが、皇弟の場合はとくに皇太弟と称した例も少なくない。
1889年(明治22)の皇室典範制定以前の制度では、皇嗣は立太子によって初めて定まり、平安初期にはその儀礼も整えられ、さらに醍醐(だいご)天皇の皇子保明(やすあきら)親王の立太子以降、壺切(つぼきり)の剣を皇太子に授ける例が開かれ、東宮相伝の護剣となって現在に至っている。立太子礼は後小松(ごこまつ)天皇から後西(ごさい)天皇に至る12代、約300年間中絶したが、1683年(天和3)の再興にあたり、立太子に先だって儲君治定を行う例が開かれ、以後、儲君は立太子以前の皇嗣をさす呼称となり、光格(こうかく)、明治両天皇のように、儲君からただちに皇位につく例も生じた。皇室典範制定後の制度では、皇位継承は典範の定める順位により、皇太子は皇嗣たる皇子の生まれながらの称で、その皇嗣が皇孫の場合は皇太孫と称するが、その他の場合には特別の呼称はない。したがって立太子礼は皇太子または皇太孫に限られ、その他の皇族が皇嗣となった場合は行われない。現在の東宮御所は東京都港区元赤坂の赤坂御用地内にある。
[橋本義彦]
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「みこのみや」とも。春宮とも。皇太子,もしくは皇太子の居所をさす。皇太子を東宮と称するのは,中国で東方を季節の春にあて,万物の生命が復活をとげ生長を開始する方角として位置づけ,宮の東方を皇太子の居所としたことによる。令の制度では,皇太子をさす場合は東宮(東宮学士・東宮舎人(とねり)など),皇太子に関する事務をとる官司については春宮坊(とうぐうぼう)と称し,用字を区別した。
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
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…天皇の位を継ぐべき皇子。たんに太子ともいい,〈ひつぎのみこ〉〈もうけのきみ〉,東宮,春宮,儲君(ちよくん)ともいう。皇太子は,天皇在位中に,皇子,皇孫,皇兄弟またはその他の皇親のうちから定められ,立太子の儀が行われるのが恒例である。立太子の儀式がはじめて知られるのは,《貞観儀式》の立皇太子儀である。それによると,紫宸殿の前庭において,親王以下百官が参列し,宣命大夫が立太子の宣命を読み上げるもので,この儀は近代に至るまで踏襲されている。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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