東宮(読み)トウグウ

デジタル大辞泉 「東宮」の意味・読み・例文・類語

とう‐ぐう【東宮/春宮】

《東は四季の春に配されて万物生成の意をもち、また易では長男を表す震にあたり、宮殿皇居の東にあったところから》
皇太子の住む宮殿。みこのみや。
太子の称。ひつぎのみこ。
[類語]太子皇子御子王子若宮親王皇太子プリンス

みこ‐の‐みや【東宮/春宮】

皇太子。とうぐう。はるのみや。
「―の帯刀たちはきに侍りけるを」〈古今・雑下・詞書〉

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「東宮」の意味・わかりやすい解説

東宮
とうぐう

皇太子の居所。転じて皇太子の称ともなる。東は、四季に配すれば春にあたり、色に配すれば青にあたるので、春宮(とうぐう)とも青宮(せいきゅう)とも称し、さらに皇位継承者の意味から、儲君(ちょくん)、ひつぎのみこ、もうけのきみなどともいう。本来、皇嗣(こうし)と定められた者は、皇子または皇孫、あるいは皇兄弟その他皇親であっても、すべて皇太子と称すべきであるが、皇弟の場合はとくに皇太弟と称した例も少なくない。

 1889年(明治22)の皇室典範制定以前の制度では、皇嗣は立太子によって初めて定まり、平安初期にはその儀礼も整えられ、さらに醍醐(だいご)天皇の皇子保明(やすあきら)親王の立太子以降、壺切(つぼきり)の剣を皇太子に授ける例が開かれ、東宮相伝の護剣となって現在に至っている。立太子礼は後小松(ごこまつ)天皇から後西(ごさい)天皇に至る12代、約300年間中絶したが、1683年(天和3)の再興にあたり、立太子に先だって儲君治定を行う例が開かれ、以後、儲君は立太子以前の皇嗣をさす呼称となり、光格(こうかく)、明治両天皇のように、儲君からただちに皇位につく例も生じた。皇室典範制定後の制度では、皇位継承は典範の定める順位により、皇太子は皇嗣たる皇子の生まれながらの称で、その皇嗣が皇孫の場合は皇太孫と称するが、その他の場合には特別の呼称はない。したがって立太子礼は皇太子または皇太孫に限られ、その他の皇族が皇嗣となった場合は行われない。現在の東宮御所は東京都港区元赤坂の赤坂御用地内にある。

橋本義彦

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改訂新版 世界大百科事典 「東宮」の意味・わかりやすい解説

東宮/春宮 (とうぐう)

皇太子の居所,転じて皇太子の別称。五行説で東は春にあたるところから,春宮とも記す。東宮職員令によると,東宮すなわち皇太子の輔導にあたる傅・学士と,皇太子の家政機関たる春宮坊とを区別している。六国史等に見える実例もおおむねこの区別に従っており,皇太子その人をさす場合は東宮と書かれることが多い。《官職要解》によると,東宮は御座所を,春宮は官司をさし,もとは皇太子の別称ではなかったが,これを混用して皇太子を東宮,春宮と書いて〈とうぐう〉と読み,また春宮を訓で〈はるのみや〉と読んだものという。
皇太子
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山川 日本史小辞典 改訂新版 「東宮」の解説

東宮
とうぐう

「みこのみや」とも。春宮とも。皇太子,もしくは皇太子の居所をさす。皇太子を東宮と称するのは,中国で東方を季節の春にあて,万物の生命が復活をとげ生長を開始する方角として位置づけ,宮の東方を皇太子の居所としたことによる。令の制度では,皇太子をさす場合は東宮(東宮学士・東宮舎人(とねり)など),皇太子に関する事務をとる官司については春宮坊(とうぐうぼう)と称し,用字を区別した。

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普及版 字通 「東宮」の読み・字形・画数・意味

【東宮】とうぐう

太子の宮。

字通「東」の項目を見る

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世界大百科事典(旧版)内の東宮の言及

【皇太子】より

…天皇の位を継ぐべき皇子。たんに太子ともいい,〈ひつぎのみこ〉〈もうけのきみ〉,東宮,春宮,儲君(ちよくん)ともいう。皇太子は,天皇在位中に,皇子,皇孫,皇兄弟またはその他の皇親のうちから定められ,立太子の儀が行われるのが恒例である。立太子の儀式がはじめて知られるのは,《貞観儀式》の立皇太子儀である。それによると,紫宸殿の前庭において,親王以下百官が参列し,宣命大夫が立太子の宣命を読み上げるもので,この儀は近代に至るまで踏襲されている。…

※「東宮」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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