徴発(読み)ちょうはつ

精選版 日本国語大辞典 「徴発」の意味・読み・例文・類語

ちょう‐はつ【徴発】

〘名〙
① 呼びだすこと。兵士などを強制的に召しだすこと。また、召されてでること。
※続日本紀‐慶雲二年(705)一一月己丑「徴発諸国騎兵、為新羅使也」 〔史記‐平準書〕
② 民の所有するものを強制的にとりたてること。特に軍需物資などを人民から駆り集めることをいう。
太政官布告第四十三号‐明治一五年(1882)八月一二日・二条「徴発は陸軍若くは海軍の際は本条に准す」

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デジタル大辞泉 「徴発」の意味・読み・例文・類語

ちょう‐はつ【徴発】

[名](スル)
人の所有する物を強制的に取り立てること。特に、軍需物資などを人民から集めること。「馬や食糧徴発する」
人を強制的に呼び集めること。「塹壕掘りに徴発する」
[類語]取り立てる徴収徴税収税課税追徴

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改訂新版 世界大百科事典 「徴発」の意味・わかりやすい解説

徴発 (ちょうはつ)

戦時または事変,時によっては平時の演習に際して地方の人民に賦課して軍需を満たすこと。日本では第2次大戦終了までは1882年制定の徴発令によって行われ,現在では自衛隊法103条に同じ性格の規定(防衛出動時における物資の収用等)がある。徴発令は朝鮮の壬午軍乱に当たり日本陸軍最初の動員を行うに際し急ぎ制定され,敗戦まで無修正で存続した。徴発は軍官憲の徴発書によって行われ,徴発の対象は糧秣薪炭,馬匹および運搬用の家畜車両器材,人夫,宿舎厩圉(きゆうぎよ)倉庫,飲水石炭,船舶鉄道,演習に適する地所,演習に要する器材であった。演習を除き,造船所および軍事の工作に要する工場機械材料職工,病院なども対象に含まれた。徴発拒否には刑事罰が科せられ,徴発物件には補償が行われた。徴発令の対象は国内であったが,外征軍が占領地で行った有償無償の物件調達をも徴発と称し,さらに徴発権のない軍人による略奪も徴発と自称し慣用されるにいたった。
執筆者:

国際法上,徴発の語は,一般には戦争法関係の条約の中で使われる。つまり,占領地域において,交戦国軍隊はその需要のための物資や役務をその地域の当局住民から提供させることができる。徴発は,占領地域における指揮官の許可なしには行えず,また徴発の対象とされるものは,食糧,燃料被服等の物資や兵馬の宿泊所・休息所または傷病兵の治療施設の提供といった役務のような占領軍の直接必要とするものに限られ,その地方の資力に相応するものでなければならない。また現品の供給に対してはなるべく即金で対価を支払わなければならない(1907年の〈ハーグ陸戦規則〉52条)。1949年ジュネーブ条約(赤十字条約)の第4(文民)条約によれば,占領国は,占領軍または占領行政機関の使用にあてる場合であって,文民たる住民の要求を考慮したうえでなければ,占領地域にある食糧,物品または医療品を徴発してはならない。
執筆者:

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普及版 字通 「徴発」の読み・字形・画数・意味

【徴発】ちようはつ

夫役や物資を徴集する。〔漢書、刑法志〕孝武位にくに至るにび、外は四夷の功を事とし、は耳目の好をんにし、發煩數(はんさく)にして、百姓(ひんかう)し、窮民法を犯す。

字通「徴」の項目を見る

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「徴発」の意味・わかりやすい解説

徴発
ちょうはつ
requisitions

戦時国際法上,占領者が占領地の住民または市町村から占領軍の軍事的必要のために物品を強制的に徴収することをいう。「陸戦ノ法規慣例ニ関スル規則」 (1907) によれば,徴発は食品,寝具,酒類など占領軍の必要品に限られ,その程度は占領地域の資力に応じたものでなければならない。徴発の手続は占領地の指揮官の許可によってなされる。徴発にはできるかぎり即金で代金を支払うことを要し,さもなくば領取書を交付して,できるかぎりすみやかに代金を支払わなければならない。海戦においても無防備の港,都市,村落などに対して,海軍の目前の需要を満たすために軍需品の徴発が認められ,これに応じないときには砲撃することができる。その徴発の程度および手続はほぼ陸戦の場合と同様である。

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世界大百科事典(旧版)内の徴発の言及

【太平洋戦争】より

… また各地で日本語の強制をはじめ日の丸への敬礼,〈君が代〉斉唱,宮城遥拝などの儀式が強制されるなど,性急な皇民化政策が実施された。そして皇民化政策以上に現地住民の反発を買ったのは,日本軍による残虐行為,強姦,現地調達主義に基づく〈徴発〉と称する物資と食糧の略奪であった。さらに日本軍は,ビルマ,マレーシア,ジャワなどの各地で労働力確保のため,現地住民の強制連行と連合国軍捕虜の強制労働を実施し,鉄道・道路の建設,陣地構築などの重労働に従事させた。…

※「徴発」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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