忍城(読み)おしじょう

精選版 日本国語大辞典 「忍城」の意味・読み・例文・類語

おし‐じょう‥ジャウ【忍城】

  1. 埼玉県行田市忍にあった平城。延徳年間(一四八九‐九二)成田親泰が築城。周囲は沼、深田の湿地帯で、堅城として知られた。江戸時代は松平氏阿部氏らの居城。また、天正一八年(一五九〇)の石田三成の水攻めで有名。堀と土塁の一部が残存。忍の浮城亀城

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日本の城がわかる事典 「忍城」の解説

おしじょう【忍城】

埼玉県行田市にあった中世の平城(ひらじろ)で、江戸時代には忍藩の藩庁が置かれた。同県指定旧跡。関東七名城の一つ。1478年(文明10)ごろに、地元の豪族の成田正等・顕泰父子が扇谷上杉氏に属していた忍一族を滅ぼして築城したとされる。以後、成田氏の居城となった。湿地帯を利用してつくられた平城で、付近は沼の中に島のような陸地が点在していたが、この沼をそのまま生かすかたちで城が築かれた。城主の成田氏は、小田原北条氏の勢力が武蔵国に及んでくるとこれに反発し、北条氏康は1553年(天文22)に同城を攻めたが攻略に失敗している。成田氏は1559年(永禄2)に関東に遠征した越後長尾景虎(のちの上杉謙信)に従った。しかし、1561年(永禄4)の小田原城攻めの後に鎌倉の鶴岡八幡宮で行われた上杉謙信の関東管領の就任式で、当時の城主の成田長泰が謙信から無礼を咎められたために上杉氏と離反し、北条氏に属した。1590年(天正18)の豊臣秀吉の北条氏攻め(小田原の役)の際、城主の成田氏長は小田原城(神奈川県小田原市)に篭城したが、家臣や付近の農民が忍城に立てこもり、石田三成を大将とする豊臣方と戦った。三成は同城の守りが固いことから、長さ28kmにおよぶ堤を建設して水攻めを行ったが落城せず、小田原城の落城後に開城した。同城には忍の浮き城という別称があるが、これはこの戦いを由来とする。徳川家康が関東に入部すると、同城には家康四男の松平忠吉が入城し、これ以降、明治の廃藩置県まで忍藩の藩庁となった。廃藩置県にともない、同城二の丸に忍県の県庁が置かれたが、その後、廃城となり、城内にあった構造物のほとんどは破壊された。現在、城跡は忍公園になっており、同城の周囲にあった土塁の一部が残っている。戦後、本丸跡に行田市本丸球場が建設されたが、現在は球場は移転し、球場跡には行田市郷土博物館が建っている。同博物館の施設の一つとして、江戸時代の御三階櫓(ごさんがいやぐら)(内部は展示館になっている)が復元されたが、位置や櫓の形状は史実と異なる。また、近郊の同県加須市の総願寺にかつての北谷門が移築され現存している。また、郷土博物館の南側に藩校進修館の門が、また同博物館の駐車場脇には、かつてどこにあった門かは明らかではないが同城の城門が移築され現存している。JR高崎線行田駅、吹上駅、熊谷駅からバスで忍城下車。または秩父鉄道行田市駅から徒歩約15分。◇忍の浮き城、亀城とも呼ばれる。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「忍城」の意味・わかりやすい解説

忍城
おしじょう

鎌倉期から江戸期の城。埼玉県行田(ぎょうだ)市本丸にあり、湿地帯に囲まれた典型的な水城(みずじろ)。鎌倉期忍氏が拠(よ)り、室町期に成田氏が拡張したという。成田氏は戦国期にかけてこの城を中心に成長発展し、山内(やまのうち)上杉氏、上杉謙信(けんしん)に属し、成田長泰(ながやす)の代に後北条(ごほうじょう)氏に降(くだ)り、1590年(天正18)の豊臣(とよとみ)秀吉の小田原征伐のとき、石田三成(みつなり)の水攻めにも開城せず、「忍の浮城」の名を高めた。のち、徳川家康の関東移封後、松平家忠(いえただ)が入城して修築し、何人かの城主の変遷をみたが、1639年(寛永16)からは阿部氏が9代、さらに1823年(文政6)からは松平(奥平)氏が5代世襲して幕末に至った。城跡は現在、諏訪曲輪(すわくるわ)の空堀の一部と土塁が残り、沼地が水上公園となっている。

[小和田哲男]

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世界大百科事典(旧版)内の忍城の言及

【忍】より

…文明年間(1469‐87)ごろ,成田親泰が山内・扇谷両上杉氏の争いに乗じてここに築城して以来,成田氏代々の居城となった。1509年(永正6)ごろここを訪れた連歌師の柴屋軒宗長(さいおくけんそうちよう)は,忍城のようすを〈水郷なり。館のめぐり四方沼水幾重ともなく,蘆の霜枯三十余町四方へかけて,水鳥,雁多く見えわたるさま云々〉(《東路の津登(あずまじのつと)》)と記している。…

※「忍城」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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