大ぜい集まって念仏を唱える行事。世阿弥(ぜあみ)作の能『百万』の背景となった嵯峨釈迦(さがしゃか)堂清凉寺(せいりょうじ)(京都市右京区)の大念仏は1279年(弘安2)に、また壬生寺(みぶでら)(京都市中京区)の大念仏は1300年(正安2)に円覚上人(えんがくしょうにん)によって始められたと伝えられ、前者は嵯峨大念仏狂言、後者は壬生狂言として国の重要無形民俗文化財に指定されている。ともに念仏狂言として黙劇の能狂言を今日に伝えている。ほかに千本閻魔(えんま)堂(京都市上京区)の大念仏にも狂言があるが、前二者に対して台詞(せりふ)を用いる点が異なる。静岡県浜松市一帯に広く分布している遠州大念仏は、7月13日から15日に寺院施餓鬼(せがき)と新盆の回向(えこう)を主として行う。その起源は、鎌倉初期とも、三方(みかた)ヶ原(はら)の合戦で討ち死にした武田方の怨霊(おんりょう)供養のため徳川家康の命により始まるともいわれる。青年層が主体となり、30~40人で一組を構成し、太鼓、双盤(そうばん)、笛、摺鉦(すりがね)にあわせ、歌枕(うたまくら)という念仏歌を唱和する。山梨県上野原市秋山無生野(むしょうの)や、岩手県下にも花巻市宮野目(みやのめ)などの大念仏があり、大念仏系統のものは各地にみられるが、盛岡周辺の各所に分布する大念仏剣舞(けんばい)は祖霊供養の大念仏に剣舞が結び付いたものである。
[高山 茂]
出典 日外アソシエーツ「歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典」歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典について 情報
…平安中期の《日本往生極楽記》がその功績をたたえていることは有名。踊念仏は大衆がいっしょに踊ることによって一体感を持つので,大念仏ともよばれ,また田楽と結合して〈やすらい踊〉ともなった。これは念仏が死霊を鎮める功力があるので,疫病などをおこす御霊(ごりよう)を鎮魂するための宗教的大衆運動になったのである。…
※「大念仏」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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