私的に尊崇して日常礼拝(らいはい)し、読経するなどして念じている仏・菩薩(ぼさつ)などの像。持仏、内仏(うちぼとけ)、あるいは枕本尊(まくらほんぞん)ともよばれ、戦乱時には陣中で護持したところから陣仏(じんぼとけ)、遊行(ゆぎょう)などに持ち歩いたりもしたので守本尊(まもりほんぞん)ともいう。小形のものを厨子(ずし)や龕(がん)に安置する例が多いが、住居内の一室を堂としたり、独立した持仏堂を建てて大きな像を安置することもある。法隆寺の橘(たちばな)夫人厨子内の阿弥陀(あみだ)三尊は、光明(こうみょう)皇后の母橘夫人の、わが国最古の念持仏として名高い。弘法大師(こうぼうだいし)が唐から持ち帰って枕本尊にしたといわれる金剛峯寺(こんごうぶじ)の諸尊仏龕は、香木の白檀(びゃくだん)から龕、仏身、その他の装飾まで彫り出したもので、蓋(ふた)をすると移動に便利な1個の砲弾形になる。
[佐藤昭夫]
個人が朝夕に帰依礼拝する仏像で,単に持仏あるいは内仏(うちぼとけ)ともいう。また,枕辺近くに安置するところから枕本尊ともよばれる。その多くは小金銅仏,小木仏で,簡素な宮殿(くうでん)(龕(がん)),厨子(ずし)などに安置される。元来念持仏は自宅の一室に宮殿,厨子を安置し,私的に礼拝するものであるが,別棟や小堂を設ける場合もあり,これを持仏堂という。今日各家庭にみる仏壇は江戸時代にその形態が成立するが,これは念持仏安置が一般化し,普及発展したものといえる。日本最古の念持仏として,法隆寺に伝存する橘夫人念持仏の銅造阿弥陀三尊像とその厨子が名高い。《玉虫厨子》も本尊は亡失するものの,念持仏を安置する厨子の典型といえる。
執筆者:光森 正士
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…〈阿弥陀三尊〉のように中尊が如来,脇侍が2体の菩薩像である場合が一般的である。またこうした1セットが個人的な礼拝対象となったり(念持仏(ねんじぶつ)),旅に携帯しやすいようにつくられたり(枕(まくら)本尊)する。特殊な形態として龕(がん)像,碑像,幢(どう)像,懸仏(かけぼとけ)などがある。…
※「念持仏」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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