六訂版 家庭医学大全科 「急性上腸間膜動脈閉塞症」の解説
急性上腸間膜動脈閉塞症
きゅうせいじょうちょうかんまくどうみゃくへいそくしょう
Acute superior mesenteric artery occlusion (SMAO)
(食道・胃・腸の病気)
どんな病気か
胃腸や肝臓、膵臓など消化吸収に関わる内臓に酸素や栄養を送る動脈は3本あり、それぞれ腹腔動脈幹、上腸間膜動脈、
早期に治療を行わないと急速に状態が悪化し、死に至ることもあります。仮に命が助かっても、腸のほとんどが
原因は何か
原因には、「
塞栓症は、
血栓症は、動脈硬化のために上腸間膜動脈の壁にコレステロールなどが沈着し、なかが狭くなったところに、動脈の壁の内側が崩れて詰まって起こります。
症状の現れ方
発症直後は、上腸間膜動脈が詰まったために七転八倒する激しい腹痛が現れます。その割に、おなかを触ると軟らかい時期があります。数時間以内に、腸の
時間が進むと、腸がむくんで麻痺してくるため、腸の内容物が停滞して
さらに症状が進むと、顔面蒼白、冷や汗、手足の冷感、脈や呼吸が速く弱くなるなどのショック状態となり、早期に手術をしないと死に至ったり、手術をしても救命できないこともあります。
検査と診断
確定的な診断は、血管造影という検査か造影剤を使用したCT検査で行われますが、超音波検査で診断がつくこともあります。放置された場合は数時間で死に至るため、心房細動を基礎にもつ人に突然発症した激しい腹痛では、たとえこれらの検査で診断がつかなくても、この病気が否定されなければ早期に手術を行い、直接確認すべきとされています。
治療の方法
発症早期6時間以内に手術ができた場合には、詰まった血管を再び流れるようにできることもあります。
治療が遅れると腸が
また、腹膜炎が進行した状態や腸が壊死し
この人工肛門は、直腸がんの場合につくる大腸人工肛門と異なり、食べたものがまだ十分消化されないうちに大量の胃液や胆汁、膵臓の消化液とともに排出されることになります。人工肛門造設直後には、1日2~3ℓの排液がみられることもまれではありません。このため、水分や塩分のバランスがとりきれず、命が失われることもあります。
病気に気づいたらどうする
心房細動といわれたことがある人が突然の激しい腹痛を訴えた場合には、緊急手術が可能な病院の外科、消化器外科を受診します。腹痛が激しければ、迷わず救急車を要請してください。
杉山 貢
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報