六訂版 家庭医学大全科 の解説
急速進行性糸球体腎炎症候群
きゅうそくしんこうせいしきゅうたいじんえんしょうこうぐん
Rapidly progressive glomerulonephritis
(子どもの病気)
どんな病気か
急速進行性糸球体腎炎は急性腎炎と同様な症状で発症後に、数カ月以内に末期腎不全まで進行してしまう予後不良な腎炎の総称です。
原因は何か
原因はさまざまで、急性糸球体腎炎や各種慢性糸球体腎炎などの
抗糸球体基底膜抗体型では、糸球体の基底膜や肺に対する自己免疫抗体が糸球体や肺に沈着することによって、急速進行性糸球体腎炎と肺出血を伴うものがあり、グッドパスチャー症候群といわれます。
免疫複合体型にはIgA腎症、紫斑(しはん)病性腎炎、
ANCA関連腎炎は、全身性の血管炎に伴うことが多く、ウェゲナー肉芽腫(にくげしゅ)などの膠原病や感染症のほか、抗甲状腺薬などの薬剤によって発症することがあります。
いずれの場合も、腎生検組織で糸球体に強い活動性を示す
症状の現れ方
多くの場合、発症前後に発熱や倦怠感、食欲不振などの風邪症状がみられ、引き続き急性糸球体腎炎と同様の血尿、蛋白尿やむくみがみられます。紫斑病や膠原病に合併する場合には、原疾患の症状(紫斑や発疹など)がみられますし、グッドパスチャー症候群では肺に沈着した自己抗体よって肺炎、肺出血を起こす場合があります。多くの場合、腎炎を発症して数週~数カ月で末期腎不全に進行します。
検査と診断
尿検査では強い血尿や蛋白尿がみられます。腎機能が早くから低下している場合が多く、血液検査ではクレアチニン、尿素窒素(BUN)の上昇や電解質(カリウムなど)の異常がみられます。また、膠原病や血管炎に合併したものでは、炎症マーカー(CRP)の上昇や赤沈の亢進などがみられるほか、種々の膠原病マーカー(抗核抗体、抗DNA抗体など)、抗糸球体基底膜抗体、抗好中球細胞質抗体(ANCA)、補体価、免疫グロブリンなどの検査値に異常がみられます。
胸部X線やCT検査では、肺出血(グッドパスチャー症候群)や
この病気が疑われる場合は、診断の確定や治療方針の決定のために腎生検が必要です。
治療の方法
急速に進行する腎炎に対して、ステロイド薬のパルス療法や各種
一般に予後が不良な場合が多いのですが、成人に比較して小児では治りやすいと考えられています。
病気に気づいたらどうする
なるべく早く、小児の腎臓病専門医がいる病院を受診します。
池住 洋平
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報