日本大百科全書(ニッポニカ) 「情報自由法」の意味・わかりやすい解説
情報自由法
じょうほうじゆうほう
Freedom of Information Act
アメリカ合衆国の1946年行政手続法(Administrative Procedure Act)の「情報公開」に関する第3条を改正した1966年制定の法律の通称。1974年および1996年に大幅に改正された。この法律は、各行政機関は記録の請求があったときは何人(なんぴと)に対しても速やかに当該「記録」(後述参照)を利用させるようにしなければならないと定め、外国人を含む何人にも請求権を認めている。ここでいう行政機関は、行政省、軍事省、連邦政府法人、連邦政府の規制を受ける法人もしくは連邦政府の行政部におけるその他の機関(大統領府を含む)またはすべての独立規制委員会をさしている(「サンシャイン法」でいう行政機関とはその範囲を異にする)。
記録の公開請求に対し行政機関が非公開とすることができる適用除外事項としては、(1)国家安全保障情報、(2)部内人事事項、(3)法定秘事項、(4)営業上の秘密、(5)行政機関相互間・行政機関内部の覚書、(6)個人のプライバシー、(7)法執行目的のために編集された記録または情報、(8)金融機関規制報告、(9)油井関係情報が列挙されている。
行政機関が非公開の決定をした場合は、不服申立てをし、行政救済を尽くしたのちに、司法救済を求めて訴訟を提起することになる。
この法律の改正のうち、とくに注目されるのは、電子情報に関する規定を盛り込んだ1996年の改正(Electronic Freedom of Information Act Amendments of 1996)である。おもな改正点をあげると、次のようになる。
〔1〕前述の「記録」について、「『記録』その他本条において情報について用いられるすべての語は、電子的な形式を含むいかなる形式であっても、行政機関に保有されているときに、本条の要件に従い行政機関の記録となるあらゆる情報を含む」という新たな定義規定を設けて、電子的記録をも含むことを明確にしたこと(判例で認められていたことを明文化した確認的な改正である)。
〔2〕請求受理後、10日以内に諾否決定をしなければならなかったのに対し、その期間を20日以内としたこと(諾否決定の遅延が問題となっていたことから、期間を延ばすことによってその範囲内で決定できるようにするための改正である)。
アメリカの情報自由法は、日本の情報公開法(1999年5月14日公布、2001年4月1日施行)の議論にも大きな影響を与えてきている。
[堀部政男]
『奥平康弘著『知る権利』(1979・岩波書店)』▽『清水英夫編『情報公開と知る権利』(1980・三省堂)』▽『平松毅著『情報公開 各国制度のしくみと理論』(1983・有斐閣)』▽『堀部政男著『情報公開制度』Ⅲ(1982、1983・東京都議会議会局)』▽『自由人権協会編『情報公開法をつくろう――アメリカ情報自由法に学ぶ』(1990・花伝社、共栄書房発売)』▽『堀部政男編『情報公開・個人情報保護』(1994・有斐閣)』▽『堀部政男著『自治体情報法』(1994・学陽書房)』▽『近畿弁護士会連合会・消費者保護委員会・大阪弁護士会・行政問題特別委員会編『開かれた政府を求めて――米国情報自由法(FOIA)は生きている』(1995・花伝社、共栄書房発売)』▽『三宅弘著『情報公開ガイドブック――立法から活用の時代へ』(1995・花伝社、共栄書房発売)』▽『堀部政男編著『情報公開・プライバシーの比較法』(1996・日本評論社)』▽『日本弁護士連合会情報公開法・民訴法問題対策本部消費者問題対策委員会編『アメリカ情報公開の現場から――秘密主義との闘い』(1997・花伝社、共栄書房発売)』▽『岡本篤尚著『国家秘密と情報公開――アメリカ情報自由法と国家秘密特権の法理』(1998・法律文化社)』▽『宇賀克也著『アメリカの情報公開』(1998・良書普及会)』▽『宇賀克也著『情報公開法の理論』新版(2000・有斐閣)』▽『松井茂記著『情報公開法』(2001・有斐閣)』▽『林田学著『情報公開法――官民の秘密主義を超えるために』(中公新書)』