赤色巨星が進化の最終段階で外層を噴出し、噴き出されたガスが、むき出しになった高温のコア(白色矮星(わいせい))からの紫外線で電離されて光る星雲。望遠鏡の性能がよくなかった時代には、面輝度が高く、ほぼ円形に見えるこの星雲の見かけのようすが、惑星の見え方に似ていたのでこの名前がつけられたが、惑星とはまったく関係のない天体である。外層を噴き出して白色矮星へと進化した星は惑星状星雲の中心に見られるので、中心星という。放出された外層が、星間空間に拡散してしまうと惑星状星雲は消滅する。惑星状星雲の寿命は、1000年から10万年程度である。可視光では、連続光成分のほとんどない輝線スペクトルを示し、[OⅢ]λ(ラムダ)5007輝線やHα(アルファ)線などが顕著に見える。赤色巨星の外層は、爆発的ではなく秒速10キロメートル程度の速度で緩やかに放出される。放出された外層には多量のダスト(塵(ちり))も含まれている。ハッブル宇宙望遠鏡で撮影された高分解能写真を見ると、惑星状星雲の形態は多種多様である。これは、具体的な放出過程は星によって千差万別で、間欠的に何度も放出されることを示している。近年は銀河系外の銀河の惑星状星雲の観測も可能になっており、惑星状星雲の光度関数から銀河の距離を求める方法が開拓されている。
[岡村定矩]
輝線星雲の一種。見かけが惑星に似ているので惑星状星雲と呼ばれる。高温の中心星のまわりに球殻状に分布するガスが中心星の紫外光によって電離し,特有の輝線を放射して輝く。代表的な惑星状星雲とそのおもな物理量を表に示す。銀河系内に1000個あまりの惑星状星雲が知られており,銀河系内の分布や中心星の化学組成などから進化の進んだ古い天体が多いと考えられている。
球殻状に分布するガスは,全体として約20km/sの速度で膨張している。この速度は現在の中心星からの脱出速度(103km/s程度)よりはるかに小さく,赤色巨星の値に近い。こうしたことから惑星状星雲は赤色巨星の末期的な段階で形成されて,急速に白色矮星(わいせい)へと進化していく,過渡的な天体として注目されている。
執筆者:小暮 智一
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…これらの輝線星雲と反射星雲と暗黒星雲は,それぞれ独立に現れることもあるが,それらは同一の領域に入り乱れて見えている場合が多い。輝線星雲は銀河系内部の天体現象として見直すと,恒星がその生涯の晩年に質量を放出してつくる惑星状星雲,恒星が爆発してとび散ってできる超新星の残骸,若いO型星から放射される紫外線で星間ガスが電離してできるHII領域などに分けられる。実際には惑星状星雲を除く輝線星雲と反射星雲を合わせて〈散光星雲〉と呼ばれてきている。…
※「惑星状星雲」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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