改訂新版 世界大百科事典 「戦争状態終結宣言」の意味・わかりやすい解説
戦争状態終結宣言 (せんそうじょうたいしゅうけつせんげん)
戦争状態終了宣言ともいう。本来,国際法上の戦争状態は,征服の場合を除き,平和条約によってはじめて終了する。しかし,両交戦国の共同宣言や,一交戦国の一方的宣言によって,戦争状態を終了させる意思が表明されることがある。前者は実質的に平和条約の一部を先取りする合意であり,国際法上戦争状態を終結させる効果をもつ。1956年の日ソ共同宣言や72年の日中共同声明がその例である。これに対し,一方的宣言は,国内法上,戦時に施行された法的措置の解除を目的とするものが多く,必ずしも国際法上戦争状態を終了させる効果はもたない。第1次,第2次世界大戦時には,このような宣言が多くなされたが,その後戦闘が再開されたり,平和条約締結によってはじめて戦争状態の終結が確認された例もある。ただし,交戦国の一方が戦争状態終結を宣言・通告し,他方がこれを受諾した場合には,一種の合意が成立したものとして,戦争状態は終了すると解される。1951年にインド,52年にビルマ(現,ミャンマー)が行った対日戦争状態終結宣言を,日本は受諾する旨表明している。また,第2次大戦で無条件降伏した日本やドイツの場合,戦争状態を終了させるか否かの決定権は連合国が握っており,のちに平和条約を結んだ日本はともかく,政府がいったん解体されたドイツに対しては,51年のイギリスやアメリカの宣言などが,法的にも戦争状態を終了させる意味をもったといえる。
→戦争 →平和条約
執筆者:田中 忠
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報