核家族や複婚家族と並ぶ、アメリカの人類学者マードックの用語。夫婦と未婚の子よりなる核家族は、親子のつながり、および兄弟のつながりに沿って近親関係を拡大する可能性をもっている。このような拡大近親関係をさまざまな形の家族境界でくぎって成立するのが拡大家族である。老親が一組の子夫婦と同居する日本の3世代直系家族、老親が複数の子夫婦と一定の期間にわたって同居する中国やインドのヒンドゥー教徒にみられる合同家族joint familyもその類型の一部である。いずれも複数の核家族が接合して、同居を通して一体としての家族を形成している点に特色がある。核家族に比べて拡大家族は成員数が多くなりやすく、また成員間の関係という点で、質の面でも複雑化する。いわゆる核家族化現象とは、拡大家族の分裂をいう。同居を前提にする拡大家族に対して、核家族化の進んだ今日、別居(「家」制度のもとでは長男夫婦と老親夫婦とは同居が規範であるが、理由あって同居しない場合など)や異居(核家族時代のもとで長男夫婦はじめ、すべての成人した子夫婦たちが老親夫婦と同居しない場合)を前提にしていても頻繁な近親関係を維持していることが多く、そうした家族形態は新しく「修正拡大家族」とよばれている。
[増田光吉・野々山久也]
『G・P・マードック著、内藤莞爾監訳『社会構造』(1978・新泉社)』▽『匠雅音著『核家族から単家族へ』(1997・丸善)』
父系あるいは母系のいずれか一方,つまり単系血縁にそって拡大する構造をもつ家族類型をふつう拡大家族extended familyというが,双系親族の一部をなす核家族の異居近親とのつながりまで含めてそれをも拡大家族と呼ぶ学者もある。
父系拡大家族は,中国の古い型の家にその典型的な例が見いだされる。そこでは,家長夫婦のもとに息子たちが結婚後も同居し,四世同堂(3世代にわたる父系の老若の夫婦が未婚の子とともに同居すること。同名の老舎の小説がある)を理想とする。しかし,頂点となる老夫婦の死後は,家産が均分相続されるため,宗族(中国の厳しく父系を守る同族)の宗家(本家)に統制力が乏しいだけでなく,家はそれぞれの息子夫婦ごとの家族核の単位に容易に分裂する。したがって家は拡大と分裂を不断に繰り返すのが特徴である。インドの母系拡大家族もまたこの点では同様で,合同家族joint familyと呼ぶ学者もある。
日本の家をも,中国の家と同様に父系拡大家族であるかのようにいう学者もあるが,日本の家は厳密な意味で父系とはいえず,非単系とみるべきであり,また拡大家族ではなく嫡系家族=直系家族stem familyとして区別するのが実証的に適切である。嫡系家族では子の世代のうち,ただ一組の夫婦だけが跡取り夫婦(息子とその嫁,娘とその婿,養男子とその嫁,養女とその婿)として両親の家にとどまり家を継承するが,その他の子女は,嫁や婿に出されたり,他家から嫁や婿を取って分家を創設し新家の初代となってその家を去ったり,他家へ養取されたりし,生家にはとどまらない。傍系の夫婦が一時期両親の家に同居するときも,嫡系,傍系の区別が明瞭であって,有賀喜左衛門が〈複合の家〉と呼んだものも拡大家族とは区別される嫡系家族の一変型にすぎないからである。〈コミューン家族〉とか〈集団婚などによる擬似拡大家族〉などを,この拡大家族と混同するのは誤りである。
→家 →家族
執筆者:中野 卓
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…彼は未開社会の家族の研究結果から,社会集団の基礎単位として普遍的に存在している〈核家族〉に注目した。この核家族は単独,あるいは二つ以上の複合した形で存在しており,複合形態は,(1)複数により共有される夫あるいは妻を介して横に結合した複婚家族と,(2)親の核家族と既婚子の核家族が縦に結合した拡大家族とに区別されるとした。この概念は日本にも紹介され,当初,核心家族,中核家族,核的家族などと訳されていたが,1959年に〈核家族〉に統一された。…
※「拡大家族」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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