人間の知性では理解できないが信仰によって受け入れられている宗教的神秘のこと。原語はラテン語のミステリウムmisterium。キリスト教以前の諸宗教では入会者のみに許される儀式や秘密の教義をさした。キリスト教の信仰の玄義をいくつかあげると、神の本性は一つであるが、父と子と聖霊の三つの位格(ペルソナ)をもつという三位一体(さんみいったい)の玄義、神の子としての位格が処女マリアに受胎したという処女受胎の玄義、イエス・キリストが十字架の死によって世を救ったという救済の玄義、キリストが死からよみがえったという復活の玄義などである。これらの神秘はどれをとっても現代の科学的知性では受け入れがたいものがあるが、世界のキリスト教を支えているのは、キリストの救世の生涯に対応するこれらの玄義に対する信仰である。
[安齋 伸]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報