中国,東北地区,遼寧省東部の炭鉱都市。人口143万(2000)。遼河の支流の渾河に沿い,瀋陽市東方約60kmにある。明代瀋陽衛撫順所がおかれ,清代,1902年(光緒28)興仁県がおかれ,のち現名に改められた。1937年市制施行。撫順炭鉱は1901年より中国人が採掘を開始したが,日露戦争後日本はロシアから利権を獲得し,満鉄の経営に移した。解放後の工業の発展は顕著で石炭,油母ケツ岩の採掘のほか発電,冶金機械,化学等の工場が建設された。雷鋒紀念館などがある。瀋吉鉄道(瀋陽~吉林)に沿う。
執筆者:河野 通博
撫順市の南にある。総面積は48~60km2である。夾炭層は新生代第三紀の撫順層群に介在し,下部累層と上部累層とに分けられる。下部累層中の炭層はレンズ状で,炭厚も構造も変化が多くしばしば炭質ケツ岩に漸移する。上部累層中に賦存する主要炭層は6層に分かれ,総炭厚は炭田西部で120~200mに達するが,東部では8mで平均総炭厚は25mである。主炭層上位の厚い油母ケツ岩層は乾溜してケツ岩油の生産に供されている。炭質は歴青炭の原料炭で,埋蔵量は130億t以上といわれ,大規模な露天掘も行われている。
執筆者:大橋 脩作 撫順炭田の開発は,日露戦争により日本軍が撫順を占拠,1905年のポーツマス条約により,それ以前ロシア極東森林会社が所有していた同炭鉱の採掘権を日本が譲りうけ,満鉄がこの経営に乗り出して以降本格化した。満鉄が撫順炭田の継承以降出炭量は急上昇をとげ,07年の23万tから14年には214万tに増加,37年には953万tに達し,東北第一の炭田として,満鉄コンツェルン内では鉄道部門と並ぶ黒字経営部門だったという。こうした高出炭量と高収益をあげえた背後には,採炭,運炭部門における機械化にくわえて中国人苦力(クーリー)の低賃金があった。彼らは,日本人社員の20%,日本人労働者の37%であり,把頭制を利用した前近代的労務管理のもとにおかれていたからである。第2次世界大戦後は,内戦による混乱や日本人技術者の抑留,送還などで生産が極度に低下したが,52年ころから徐々に生産は回復し,年産1500万tを記録した。しかし,深部への稼行区域移行によって,93年は4炭鉱(うち露天掘り1)で876万tと減少しつつある。
執筆者:小林 英夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
中国、遼寧(りょうねい)省東部の地級市。渾河(こんが)中流沿岸に位置し、4市轄区と撫順県、新賓(しんひん)満洲(まんしゅう)族自治県、清原(せいげん)満洲族自治県を管轄する(2016年時点)。人口219万3000(2012)。
撫順炭田を中心に発展した鉱工業都市で、かつては「石炭の都」とよばれた。漢の武帝の時代にすでに村落があり、石炭を採取していたといわれるが、商業活動が盛んな市場町となったのは明(みん)代以後のことで、清(しん)代末期に県が置かれた。1901年資本家の王承尭(おうしょうぎょう)と翁寿(おうじゅ)が本格的な石炭の採掘を始めた。日露戦争後の1905年(明治38)には日本が採掘権を独占し、南満州鉄道株式会社が炭鉱の経営にあたった。第二次世界大戦後は荒廃したが、中華人民共和国の成立以後急速に復興し、一時は東北地区最大の炭鉱であった。大規模な露天掘りのほか坑道掘進も行われた。さらに炭層上部を厚い油母頁岩(けつがん)が覆い、大慶(たいけい)油田が採掘される以前は人造石油の重要な原料であった。石炭採掘のため人口が急増し、1937年市制が施行された。今日では石炭採掘は衰退し、2015年時点で国内56位の炭鉱にすぎない。市政府は電子部品製造や観光産業に力を入れ、石炭鉱業、重工業依存からの脱却を図っている。
周辺地域では、米、トウモロコシ、コウリャン、大豆、アワ、ラッカセイを産する。市の東部の渾河上流部には21億トンの貯水量をもつ大伙房(だいかぼう)ダムがある。ダム付近には清初の関外三陵の一つ永陵(えいりょう)など、清の太祖ヌルハチに関係する史跡が多い。また、市南部の平頂山には、1932年(昭和7)に日本軍が行った大量虐殺(平頂山事件)の犠牲者をまつる殉難同胞記念碑がある。溥儀(ふぎ)や日本人捕虜を収容していた戦犯管理所があったことでも知られる。
[河野通博・編集部 2017年4月18日]
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