日本大百科全書(ニッポニカ) 「支払督促」の意味・わかりやすい解説
支払督促
しはらいとくそく
民事訴訟法上、金銭その他の代替物または有価証券の一定数量の給付を目的とする請求につき、債権者の一方的申立てにより債務者を審尋せずにただちに発せられ、債務者にその支払いを督促する手続をいう(民事訴訟法382条以下)。この支払督促に対して債務者が異議を申し立てて争うと、通常の給付を求める訴訟手続に移行するので(同法395条)、債務者の不利益は避けられている。債務者に対する支払督促送達の日から2週間以内に督促異議の申立てがないときは、債権者の申立てにより裁判所書記官は支払督促に仮執行の宣言をし、これによって支払督促は執行力を生ずる(同法391条)。ただし、仮執行宣言の申立てができるときから30日を経過しても債権者からの申立てがないときは、支払督促は失効する(同法392条)。なお、債務者は、仮執行の宣言を付した支払督促送達の日から2週間以内は、さらに督促異議の申立てができる。この督促異議が適法であれば、この段階で通常の訴訟手続に移行する(同法393条・395条)。判決手続のほかに、この督促手続が設けられているのは、債務者の自発的履行を促すとともに、債権者のために手数と費用の負担を軽くして簡易迅速に債務名義を得させるためである。
[内田武吉・加藤哲夫]