2011年(平成23)3月に起きた福島第一原子力発電所の事故によって拡散した放射性物質について、環境の汚染による人の健康や生活環境への影響を速やかに軽減することを目的として定められた法律で、正式名称は「平成二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故により放出された放射性物質による環境の汚染への対処に関する特別措置法」(平成23年法律第110号)である。2012年1月1日に全面施行された。関係主体の責務を明らかにし、行うべき措置を定めている。
[田中 勝]
福島第一原子力発電所の事故において、多くの放射性物質が放出され、環境が汚染された。それまでは放射性物質あるいはこれによって汚染された物は、廃棄物処理法のなかでは廃棄物として扱われず、原子力発電所あるいはその操業に伴って発生する放射性物質は原子炉等規制法で、医療機関等で治療や検査などで利用されるラジオ・アイソトープ等は放射線障害防止法で扱われてきた。ところが原子力発電所の事故により放出された放射性物質あるいはそれらを含む廃棄物については、事故が起こること自体が想定されてこなかったこともあり、どの法律も取り扱ってこなかった。そこでできたのがこの法律である。
[田中 勝]
「特定廃棄物」の処理は国が行うことになっている。特定廃棄物は(1)特別な管理が必要な程度に汚染されているおそれのある地域として環境大臣が指定する「汚染廃棄物対策地域」の廃棄物と、(2)対策地域外のものでも放射性物質による汚染状態が一定の基準(8000ベクレル/キログラム)を超える「指定廃棄物」からなる。特定廃棄物以外の汚染レベルが8000ベクレル/キログラム以下の廃棄物の処理については廃棄物処理法の規定が適用される。
[田中 勝]
放射性物質に汚染された土壌等(草木・工作物等を含む)の除染等の措置については、汚染の著しい地域を環境大臣が「除染特別地域」に指定し、その地域内の除染は国が実施する。また、それ以外の地域でも汚染が一定の要件(地域の指定要件は、0.23マイクロシーベルト/時以上の放射線量)に適合する地域を環境大臣が「汚染状況重点調査地域」に指定し、都道府県や政令指定都市が地域内の汚染状況の調査測定を実施、その結果に基づき除染計画を策定する。除染を実施する場合、行政が管理する土地等はそれぞれの行政が、それ以外の土地等についてはそれぞれの市町村が行う。また、農地等については市町村の要請で都道府県が行うことができる。
[田中 勝]
本法は特別措置法であるため、福島第一原発事故由来の汚染に対処するもので、それ以外の原発事故による汚染に対処するものではない。あってはならないが、今後発生するかもしれない他の原子力発電所の事故等によって排出される放射性物質による汚染を対象にした法整備が必要である。
[田中 勝]
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