日本大百科全書(ニッポニカ) 「救荒食品」の意味・わかりやすい解説
救荒食品
きゅうこうしょくひん
凶作などの天災時、または戦時などの食糧不足のときに、応急的につくるものや採取して食糧とするものを一般に救荒食品という。山野に自生する植物や、普通、食用としない魚、昆虫、動物などを含む多種多様のものをいう。時代により変遷があり、国や地域によって相違がある。野生の植物としては昔からワラビ、ゼンマイ、ヨモギ、クズ、ヤマユリ、ヒガンバナのような野草や、ササの実、ソテツ、トチノキ、クヌギ、クルミ、カヤなどの木の実、ヤマブドウ、アケビ、グミなどの山野の果実がある。ソテツの実のように、発癌(はつがん)物質が含まれていて、これを十分な水ざらしで抜く必要のあるものや、ヒガンバナの球根、ドングリのように、デンプンに富むが、毒成分や渋を十分に抜いて使用する必要のあるものがあり、昔は、このような知識もかなり普及していた。しかし、凶作となってから代用食を探すのでは限りがあるため、生産手段の発達とともに、代用となる作物をあらかじめ栽培して凶作に備えるようになった。これを救荒作物という。救荒作物の条件としては、不順な気候ややせ地でも生育可能で、雑草や病害虫に強く、生育・成熟が早い、主食の代用となりうるだけの十分なエネルギー量をもっていること、などがあげられる。救荒作物には、サツマイモ、ジャガイモ、サトイモ、キクイモなどのいも類と、ヒエやソバなどの雑穀類がある。政治的には、災害だけでなく、自給率の低下などを踏まえ、備蓄米などの食糧の確保が課題となっている。
[河野友美・星川清親・山口米子]