教職員の昇進制度(読み)きょうしょくいんのしょうしんせいど

大学事典 「教職員の昇進制度」の解説

教職員の昇進制度
きょうしょくいんのしょうしんせいど

昇進教職員)は,下位の職級に位置する職務から上位の職級に位置する職務に異動することを意味する。日本の企業の多くにおいては,役職と職能資格が区分されて従業員の処遇(職の資格制度)が行われていることから,通常上位の資格への移行は「昇格(教職員)」と称され,上位の役職への異動である「昇進」と区別されている。大学においては一般に教員外職員(以下「職員」)については同様に区別されるが,身分法令で定められている教員については取扱いが異なるので,本項目では教員と職員を分けて取り扱う。なお,教員については学長や部局長への就任については一般に昇進とみなされないことから,教授職等への昇任について記述する。

[教員]

大学における教員職として学校教育法92条は教授(日本),准教授(日本),講師(日本),助教(日本),助手(日本)を規定している。これらのうち准教授(助教授(日本)から置き換え)および助教は,2007年の学校教育法改正によって新たに設けられた職である。これらの教員職は,助教授の職務が「教授の職務を助ける」と規定されていたことに見るように,「教授又は助教授に準ずる職務に従事する」と職務が規定されていた講師を除いて階層性が明瞭であり(実際上は助教授に次ぐ職階),それは講座制を採用した大学においてとくに顕著であった。そこでは,大学教員は助手から講師,次いで助教授,教授へと昇格(昇任(教職員))していくことが想定されていた。

 前述の学校教育法改正は,講座制・学科目制関連の規定削除と併せて,准教授・助教を独立して職務を遂行する職として規定し,教授・准教授・講師・助教間の職務内容に差異がなくなった。このため従前と比べて不明瞭ではあるものの,講師・助手に関する規定ならびにその他の職に求められる知識・能力の水準の違いに鑑みて,助手から教授に至る階層性は依然として存在し,上位の職への移行は昇任であることには変わりはない。しかしながら,教員は大学間を移動することによって昇任を果たすことが多く,その傾向は公募制や任期制を採用する大学が増えるに連れて顕著になっている。任期付で雇用された教員については,常勤への地位変更をもって昇任とされる場合がある。

 大学内部での昇任の手順は,教員採用と同様に委員会組織を関連部局内に設けて審査し,その選考結果に基づいて教授会(日本)で決定する場合が多い。一部の大学では,全学委員会等で審査が行われる。昇任の審査基準は,任用の場合と同様に大学設置基準第4章で定められているが(「任用制度」項目を参照),必要査読付論文数等の形で各部局において詳細に決められていることが通例である。日本に限らず,多くの大学で教員の昇任は教授会等の教員集団の専権事項と考えられてきた。今日でも教授会等が重要な役割を果たすことに変わりはないものの,全学の資源管理や教学マネジメントの観点等から執行部の意向が反映されることを近年の政策は促している。

[職員]

多くの企業で採用されている職能資格制度であるが,大学の職員については年功序列型人事制度が多く採用され,職能資格制度が普及してきたのは比較的最近のことである。この制度は人事考課制度,能力開発制度,昇格試験制度等と連結して設計され,その下で職務や役職と階層化された資格が結び付けられている。各資格には必要とされる職務遂行能力(職能要件)が定められ,人事考課や昇格試験等に基づいて上位資格への昇格が行われる。一般に職能資格の上昇は給与に反映されるが,上位の役職への異動を伴う場合が昇進である。
著者: 大場淳

参考文献: 篠田道夫『大学戦略経営論―中長期計画の実質化によるマネジメント改革』東信堂,2010.

参考文献: 新堀通也編『大学教授職の総合的研究―アカデミック・プロフェッションの社会学』多賀出版,1984.

出典 平凡社「大学事典」大学事典について 情報

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