新保守主義(読み)シンホシュシュギ(その他表記)New Conservatism

デジタル大辞泉 「新保守主義」の意味・読み・例文・類語

しん‐ほしゅしゅぎ【新保守主義】

自由主義経済を基盤とする現行の体制を堅持しつつ、社会福祉や富の分配の平等化など、革新勢力の主張を先取りして保守反動に陥ることを避け、漸進的な政策を進めていこうとする保守勢力の考え方や政策。特に、1970年代から顕著になった米国の政治思想国防・安全保障に重点を置き、軍事力を整え、経済面では競争原理に基づく自由市場を保ち、社会的にはキリスト教への信仰を強め、伝統的価値観・社会規律の復活を目指す。新自由主義。ネオコンサバティズムネオコン

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精選版 日本国語大辞典 「新保守主義」の意味・読み・例文・類語

しん‐ほしゅしゅぎ【新保守主義】

  1. 〘 名詞 〙 イギリス保守党が一九五一年以来掲げてきた政策原理。労働党の主張する進歩的な社会福祉政策を保守党の立場から先取りしたもの。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「新保守主義」の意味・わかりやすい解説

新保守主義
しんほしゅしゅぎ
New Conservatism

1970年代後半以降、アメリカにおいて支配的となった政治的潮流をさす。その特徴としては、第一に自由放任主義の強調、第二にキリスト教との密接な関係をあげることができよう。一般に西欧諸国の保守主義は、貴族制身分制を擁護し、資本主義自由競争に対してはむしろ懐疑的で、社会政策に強い関心を示すことも少なくない。しかし、アメリカの保守主義は徹頭徹尾自由主義的であり、政府の干渉をできるだけ排して自由競争や自由市場の原則を貫くことに熱心である。具体的には減税、小さな政府の実現、社会福祉の見直し、規制緩和の徹底などが要求されることになる。経済政策に関する限り、新保守主義の内容は、伝統的に自由主義(リベラリズム)とされてきたものと変わらない。そこには、アメリカ独自の歴史的背景がある。1920年代までアメリカの政治は基本的に自由放任主義的であったが、30年代のニューディール政策以降、平等主義的傾向を強めた。この平等主義的政策が新自由主義とよばれたため、自由放任主義への復帰を求める立場は保守主義とよばれることになったのである。80年代のイギリスにおけるサッチャー主義(サッチャリズム)も、経済政策においては、新保守主義的とよぶことができよう。

 第二のキリスト教との関連は、平等化の進行によって節度を失いつつある社会に、伝統的な価値や規律を復活させるため、キリスト教への信仰を強めようとする形で現れる。とくにエバンジェリカル(福音派)やファンダメンタリスト(根本主義者・原理主義者)が大きな役割を果たしており、具体的には家族の価値の復権を強調しつつ、妊娠中絶の合法化、バス通学による統合教育の強制、公立学校での礼拝禁止、同性愛の容認などに反対し、アメリカ社会の道徳的浄化に努めるべきことを訴えている。1989年に設立されたキリスト教徒連合Christian Coalitionは、キリスト教的保守主義者の政治組織であり、その草の根活動は、1990年代における連邦議会での共和党躍進を支える原動力の一つになった。

[阿部 齊]

『佐々木毅著『現代アメリカの保守主義』(1993・岩波同時代ライブラリー)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「新保守主義」の意味・わかりやすい解説

新保守主義[アメリカ合衆国]
しんほしゅしゅぎ[アメリカがっしゅうこく]
neoconservatism

一般的には,1970年代半ば以降の福祉国家に対する疑念,市場での自由競争尊重,自助精神奨励といった,英米日などの先進国に共通する風潮を指すが,アメリカ政治の文脈では,最近の保守主義の中でも,特にリベラル派からの転向組のそれをいう。こうした主張は,60年代にジョンソン大統領が実現した「偉大な社会」を福祉政策の行き過ぎとして非難し,保守化した進歩的知識人たちによって代弁されている。彼らは,人種や性の平等には賛成し,社会福祉を否定するわけでもないが,伝統的道徳観を重んじカウンター・カルチャーを嫌悪する。アラン・ブルームの『アメリカン・マインドの終焉 (しゅうえん) 』がベストセラーになったのも,80年代のアメリカ社会にこうした保守的な精神風土があったからである。近年自由市場を信奉する点では保守的とみなされるが,対外的に非介入政策を表明し,核凍結を支持する点で,旧来のリベラル派より革新的な,民主党の新世代議員とその支持者はネオリベラルと呼ばれている。

新保守主義
しんほしゅしゅぎ
neoconservatism

1960年代後半以降,アメリカ合衆国でリベラリズムや対抗文化の行き過ぎを批判しつつ登場してきた思想。I.クリストル,D.ベル,S.ハンチントンなどがその代表である。アメリカでは,ベトナム戦争の経験に伴う文化的混乱から若者を中心として性の自由や家族の解体といった急進的な主張がなされたが,反面,こうした潮流に強い危機意識をいだき,西欧的価値を擁護しながらアメリカの文化的同一性を再定義しようという試みも生まれた。これらは資本主義と自由の結びつきを強調し,共産主義に対する批判を共有するもので,現実の政策的提言においても連邦政府が過剰な役割を果たすことには懐疑的で,私的集団の活動の場を拡大する「小さな政府」への方向性を示唆している。このような主張を経済論として展開しているのが,新自由主義である。

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