1970年代後半以降、アメリカにおいて支配的となった政治的潮流をさす。その特徴としては、第一に自由放任主義の強調、第二にキリスト教との密接な関係をあげることができよう。一般に西欧諸国の保守主義は、貴族制や身分制を擁護し、資本主義的自由競争に対してはむしろ懐疑的で、社会政策に強い関心を示すことも少なくない。しかし、アメリカの保守主義は徹頭徹尾自由主義的であり、政府の干渉をできるだけ排して自由競争や自由市場の原則を貫くことに熱心である。具体的には減税、小さな政府の実現、社会福祉の見直し、規制緩和の徹底などが要求されることになる。経済政策に関する限り、新保守主義の内容は、伝統的に自由主義(リベラリズム)とされてきたものと変わらない。そこには、アメリカ独自の歴史的背景がある。1920年代までアメリカの政治は基本的に自由放任主義的であったが、30年代のニューディール政策以降、平等主義的傾向を強めた。この平等主義的政策が新自由主義とよばれたため、自由放任主義への復帰を求める立場は保守主義とよばれることになったのである。80年代のイギリスにおけるサッチャー主義(サッチャリズム)も、経済政策においては、新保守主義的とよぶことができよう。
第二のキリスト教との関連は、平等化の進行によって節度を失いつつある社会に、伝統的な価値や規律を復活させるため、キリスト教への信仰を強めようとする形で現れる。とくにエバンジェリカル(福音派)やファンダメンタリスト(根本主義者・原理主義者)が大きな役割を果たしており、具体的には家族の価値の復権を強調しつつ、妊娠中絶の合法化、バス通学による統合教育の強制、公立学校での礼拝禁止、同性愛の容認などに反対し、アメリカ社会の道徳的浄化に努めるべきことを訴えている。1989年に設立されたキリスト教徒連合Christian Coalitionは、キリスト教的保守主義者の政治組織であり、その草の根活動は、1990年代における連邦議会での共和党躍進を支える原動力の一つになった。
[阿部 齊]
『佐々木毅著『現代アメリカの保守主義』(1993・岩波同時代ライブラリー)』
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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