日本大百科全書(ニッポニカ) 「方トリウム鉱」の意味・わかりやすい解説
方トリウム鉱
ほうとりうむこう
thorianite
二酸化トリウムの鉱物。ウラン置換体閃(せん)ウラン鉱などとともに閃ウラン鉱系を形成し、中間物も知られている。自形は立方体がほとんどでまれに正八面体の面の出ることもある。花崗岩(かこうがん)質ペグマタイト、変成ペグマタイト、変成スカルン中に産し、まれにカーボナタイト(火成起源の炭酸塩岩)中からも産する。あるいはこれらから導かれた砂鉱中に産する。日本での産出は確実ではないが、福島県川俣(かわまた)町水晶山のペグマタイトから産する閃ウラン鉱のなかに著しくトリウムに富んだものがあり、閃ウラン鉱との中間物と判断される。
共存鉱物はペグマタイトの場合は、トール石、ジルコン、チタン鉄鉱、褐簾石(かつれんせき)、微斜長石あるいは正長石、黒雲母(くろうんも)など。変成スカルンの場合は、方解石、金雲母、透閃石(とうせんせき)、苦土尖晶石(くどせんしょうせき)など。同定は形態、大きな比重、非常に高い硬度のわりにもろい性質。放射能の存在など。端成分に近いものは石英と共存しないが、著量のUO2を含んだものは共存する。命名は化学成分であるトリウムに由来する。
[加藤 昭]