明珍(読み)ミョウチン

デジタル大辞泉 「明珍」の意味・読み・例文・類語

みょうちん〔ミヤウチン〕【明珍】

室町時代より続いた甲冑師かっちゅうし家名明珍派とよばれ、関東で活躍したが、江戸時代には全国分布つば・馬具なども製作した。

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精選版 日本国語大辞典 「明珍」の意味・読み・例文・類語

みょうちんミャウチン【明珍】

  1. 甲冑師の家名。建久正治一一九〇‐一二〇一)の出雲守紀宗介初祖とし、元祿享保一六八八‐一七三六)頃まで二十数代に及んだ。その一門は関東を中心に全国で繁栄甲冑のほか刀の鐔(つば)その他の鉄工品なども製作した。

みょうちんミャウチン【明珍】

  1. 〘 名詞 〙みょうちんおり(明珍織)」の略。
    1. [初出の実例]「帯は繻珍か明珍(ミャウチン)か」(出典:濁りそめ(1900)〈永井荷風〉)

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改訂新版 世界大百科事典 「明珍」の意味・わかりやすい解説

明珍 (みょうちん)

甲冑師の一流派。〈明珍系図〉によると,平安時代末に初代出雲守紀宗介(きのむねすけ)が京都九条に住し,近衛天皇より明珍の号を賜ったと伝え,以後連綿として江戸時代に及んでいる。しかし実際に甲冑の作品をみるのは室町時代以降からで,そのころにはすでに相州小田原,鎌倉雪ノ下,常陸国府中,上野国小幡,白井など各地分派ができていた。江戸時代に入ると江戸,姫路,広島,高知金沢,福井,仙台,弘前などにも広く分布し,甲冑師ではこの明珍の系統がいちばん広まった。しかし江戸時代には甲冑の製作は少なく,轡(くつわ),鐔(つば)などの馬具,武具や自在に動く鉄置物を製作した派もあり,また古甲冑の鑑定も行っている。この派の特徴は鉄の鍛(きたえ)がよいことと,旧来の兜鉢と異なって,誇張的なほどあまり大きく作らず,矧板(はぎいた)を二重に矧ぎ合わせるなど堅牢で実用的であったことである。この系統の中では室町時代末期の高義,義通,信家が名高く,江戸時代にはこの3工を三作といって珍重した。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「明珍」の意味・わかりやすい解説

明珍
みょうちん

甲冑(かっちゅう)師の一流派。「明珍系図」によると、平安時代末に初代出雲守(いずものかみ)紀宗介(きのむねすけ)が京都九条に住し、近衛(このえ)天皇より明珍の号を賜ったと伝える。しかしその作品がみえるのは室町以降で、室町後期にもっとも活躍したことが推察される。このころすでに小田原、鎌倉、常陸(ひたち)(茨城県)、上野(こうずけ)(群馬県)などに分派ができ、江戸時代に入ると江戸、姫路、広島、高知、金沢、福井、仙台、弘前(ひろさき)と各地に広く分布した。鉄の鍛(きたえ)がよく、堅牢(けんろう)で実用的なのがこの派の特徴で、甲冑のほか馬の轡(くつわ)、鉄鐔(てつつば)、茶道具の鐶(かん)、火箸(ひばし)や自在に動く置物などの制作も行い、そのほか古甲冑の鑑定にも権威を示した。

 17代信家(のぶいえ)(室町後期)は名工の誉れ高く、ほかに高義(たかよし)、義通(よしみち)も知られ、江戸時代にはこの三工を三作と称して珍重した。

[原田一敏]

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百科事典マイペディア 「明珍」の意味・わかりやすい解説

明珍【みょうちん】

甲冑(かっちゅう)師の家系。鎌倉初期の紀宗介(きのむねすけ)が開祖と伝え,室町末期に信家が中興。室町時代から甲冑と鉄鐔(つば)の製作を併行,桃山初期にかけて全盛。江戸時代の鐔には小型厚手の鉄鐔に人物等を高彫したものが多い。正系は京都にあり,各地に分派した。

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「明珍」の解説

明珍
みょうちん

甲冑(かっちゅう)師の一派。「明珍系図」によると,中興の祖宗介は近衛天皇から明珍の号を賜るとあるが,確証がない。実際の作品は室町末期からみられ,明珍信家に明応・永正年紀の鉄錆地筋兜鉢がある。江戸時代になると江戸・弘前・仙台・金沢・広島・高知などに広く分布し,甲冑師では明珍派が最も栄えた。「毛吹草」に「明珍・鎖」とあるように,甲冑以外の鐔(つば)・鷹の鈴・自在置物・轡(くつわ)など,さまざまな鉄の細工物を製作した。

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旺文社日本史事典 三訂版 「明珍」の解説

明珍
みょうちん

平安後期から江戸時代まで続いた甲冑師の家
代々甲冑をつくるのを各地で業としたが,室町時代から鐔 (つば) も製作。武田信玄に仕えた17代信家は鐔工名人として中興の祖といわれた。

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