改訂新版 世界大百科事典 「星室裁判所」の意味・わかりやすい解説
星室裁判所 (せいしつさいばんしょ)
Court of Star Chamber
イギリスで,中世末から裁判を含む国政一般の重大問題を討議する国王評議会が宮殿内の〈スター・チェンバー〉つまり〈星の間〉で開催されていたことから,ここで開催される裁判のための会議体が漸次星室裁判所といわれだしたものと思われる。制度的に整うのは1540年前後である。星室裁判所は当時国政の中心であった枢密院の裁判所としての機能を担い,ほとんど同一の構成員から成っていた。陪審を用いないなどコモン・ロー訴訟手続とは違った糾問主義・職権主義的手続で,各種裁判所の後見的機能,騒擾・裁判所侮辱・陪審の不正・文書誹毀(ひき)・未遂など当時のコモン・ローが処罰しえなかった犯罪の裁判,国王布告違反の処罰など,主として刑事裁判権を行使し,死刑は科すことができなかったが,重い罰金と投獄などで罰した。同裁判所は,刑事のエクイティ裁判所(衡平法)として時代に即応した一定の役割を果たしていたが,ピューリタン革命の勃発といわれる1640年の長期議会が始まった翌年に議会制定法で廃止された。末期の同裁判所が反絶対王政運動に対しての弾圧機関となっていたとみなされたゆえである。
執筆者:小山 貞夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報