春日山城跡(読み)かすがやまじようあと

日本歴史地名大系 「春日山城跡」の解説

春日山城跡
かすがやまじようあと

[現在地名]上越市中屋敷

五智ごち海岸より三キロ内陸、高田平野の北西端に位置する独立山塊春日山(一八〇メートル)の頂部にあった山城。戦国大名上杉謙信(越後守護代長尾家の出。幼名景虎、のち政虎・輝虎と改名。越後守護上杉家を継ぎ、入道して謙信と号する)の居城として知られる。別名はちみね城。国指定史跡。春日山(鉢ヶ峰)は信越本線直江津なおえつ駅と高田駅との中間、春日山駅西方にそびえ、車窓からもその姿を仰ぐことができる。本丸跡からの展望はきわめてよい。眼下に日本海・高田平野・直江津市街地・御館おたて跡、よね山・妙高みようこう山・やけ山・南葉なんば山などの頸城くびき連山が眺望できる。春日山の名称は、奈良春日社の分霊を勧請した春日神社がかつて山上にあったことに由来し(のち東麓に移転)、「梅花無尽蔵」長享二年(一四八八)一〇月一三日条に載る漢詩中に「桑域名高春日山」とみえる。城は守護代長尾高景が関東管領上杉憲方の次男竜命丸(房方)を越後守護に迎えて府内ふない(城跡不明)に住まわせ、自らは執事として鉢ヶ峰城を築き、同城に住んだのに始まるという説、長禄(一四五七―六〇)の頃、守護上杉氏の要害として築かれ、守護代長尾氏が守ったとする説などがある。しかし上越地方をおさえる要衝の地に立地していることからみて、南北朝動乱期には築城されていたものと推測される。

春日山城を要害として堅固な構えにしたのは戦国時代の守護代長尾為景である。普請の時期は、関東管領上杉顕定軍を長森ながもり(現南魚沼郡六日町)で撃破した永正七年(一五一〇)以降と思われる。それは永正六年、為景が顕定軍に敗れて越中へ敗走した苦い経験があったため、府内の長尾ながお館と春日山城を堅固に普請したに違いない。一六世紀前半、為景は春日山城に根小屋を構え、長尾館からここに移った。城を示す春日山という語の史料上の初見は、永正一〇年と推定される一〇月二三日の長尾為景書状(上杉家文書)で、「上様(上杉定実)春日山へ御登城候」とある。

為景は天文五年(一五三六)家督を長男晴景に譲り、一二月二四日死去した。ところが晴景には武将としての器量がなかったため、越後は乱れた。そのため守護上杉定実の斡旋で、晴景の弟景虎(謙信)が同一七年一二月晦日長尾家の家督を相続し、同一八年一月四日の長尾景虎書状(上野文書)に「当地春日山へ相移候」とあるように春日山城に入った。以後謙信は天正六年(一五七八)四九歳で死去するまでの三〇年間、春日山城を根拠地に東奔西走した。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

国指定史跡ガイド 「春日山城跡」の解説

かすがやまじょうあと【春日山城跡】


新潟県上越市中屋敷にある山城跡。頸城(くびき)平野の西北に位置する標高180mの春日山山頂に築かれ、別名を鉢ヶ峰城ともいう。春日山の名は、奈良の春日大社から分霊勧請(かんじょう)した春日神社に由来する。南北朝時代に越後国守護、上杉氏が越後府中の館の詰め城として築城したのが始まりとされ、1507年(永正4)、守護代であった長尾為景(ためかげ)が守護上杉房能(ふさよし)と対立し、その養子上杉定実(さだざね)を擁立して新守護とし、定実が府中に入り、長尾氏が春日山城主となった。その後、1548年(天文17)に兄の晴景から家督を相続した長尾景虎(のちの上杉謙信)が入城し、1578年(天正6)にここで死ぬまで謙信の本拠地となった。1550年(天文19)には越後上杉氏が断絶し、謙信は事実上の越後国主となり、その後の関東出陣や武田軍の越後侵入の報に接した折などに城の普請が進められ、地域支配と侵攻に対抗するための拠点として大城郭になった。謙信の死後、後嗣争い(御館(おたて)の乱)を制した養子上杉景勝が入城するが、会津へ移った後に越後を支配した堀氏は、1607年(慶長12)、直江津港近くに築いた福島城に移り、春日山城はその役目を終えた。眺望のよい山上に本丸を構え、その下に二ノ丸、三ノ丸を配し、大井戸跡や館跡が残り、土塁や濠がめぐる主要部が、1935年(昭和10)に国の史跡に指定された。その後、春日山から東南に延びる尾根の先端に築かれた東城砦や、その西に続く砦跡、城門を移設したといわれる門がある林泉寺東方の代官跡と呼ばれる地域などが追加指定された。JR信越本線春日山駅から徒歩約40分。

出典 講談社国指定史跡ガイドについて 情報

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