普門(読み)ふもん

精選版 日本国語大辞典 「普門」の意味・読み・例文・類語

ふ‐もん【普門】

  1. [ 1 ] 〘 名詞 〙 ( あまねくゆきわたっている門戸の意 ) 仏語
    1. 諸宗により理解を異にし、天台宗では中道実相の理がすべてに妥当することをいい、真言宗では一切の智徳を収める大日如来をさしていう。
      1. [初出の実例]「金剛之普門、人法倶妙矣哉」(出典:性霊集‐六(835頃)右将軍於華山宅設左僕射大祥斎願文)
    2. 観世音菩薩が、広く衆生に救いの門を開いていること。
  2. [ 2 ]
    1. [ 一 ]ふもんぼん(普門品)」の略。
      1. [初出の実例]「此経は四要品肝心也、謂く方便〈発心〉安楽〈修行〉寿量〈菩提〉普門(フモン)涅槃〉」(出典:雑談集(1305)七)
    2. [ 二 ] 鎌倉中期の臨済宗の僧。南禅寺派の祖。字は無関。勅諡は仏心禅師・大明国師。長野の人。栄朝・円爾弁円について禅を修め、四〇歳のときに入宋、荊叟如珏・断橋妙倫を師として悟りを究め、帰国後再び円爾弁円に随侍した。弘安四年(一二八一)東福寺第三世。正応四年(一二九一亀山上皇帰依を受けて南禅寺開山となる。建暦二~正応四年(一二一二‐九一

あまねき‐かど【普門】

  1. 〘 名詞 〙 ( 仏語「普門(ふもん)」の訓読み )
  2. 観音などが、広く衆生を済度しようとする広大な慈悲の門。
    1. [初出の実例]「世を救ふうちには誰か入らざらむ普き門を人しささねば」(出典:公任集(1044頃))
  3. 観音などをまつる寺をいう。
    1. [初出の実例]「女はいとど罪深く、従ふ道も忘れ水〈略〉あまねき門(カド)に立寄るも、爰ぞ一念重願寺、念彼観音の、力ぼし助け給へと諸共に、心をこめて願ひぼし」(出典:浄瑠璃・心中二つ腹帯(1722)道行)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「普門」の解説

普門(1) ふもん

1636-1692 江戸時代前期の僧。
寛永13年生まれ。真宗高田派伊勢(いせ)(三重県)彰見寺の住職。江戸増上寺でまなぶ。のち関東の親鸞(しんらん)の旧跡をたずね,下野(しもつけ)(栃木県)高田専修(せんじゅ)寺で「親鸞聖人絵伝撮要鈔」をあらわした。元禄(げんろく)5年9月3日死去。57歳。号は潮誉。著作に「顕教行証文類師資発覆抄」など。

出典 講談社デジタル版 日本人名大辞典+Plusについて 情報 | 凡例

世界大百科事典(旧版)内の普門の言及

【無関普門】より

…鎌倉中期の臨済宗聖一(しよういち)派の僧。諱(いみな)は玄悟,房号を普門という。信濃国(長野県)に生まれた。…

※「普門」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

カイロス

宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、和歌山県串本町の民間発射場「スペースポート紀伊」から打ち上げる。同社は契約から打ち上げまでの期間で世界最短を目指すとし、将来的には...

カイロスの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android