改訂新版 世界大百科事典 「智異山」の意味・わかりやすい解説
智異山 (ちいさん)
Chiri-san
朝鮮半島南部の小白山脈中の主峰。標高1915mで,韓国の半島部の最高峰。山体が雄大で,広大な傾斜面一帯は原生林がうっそうと茂った森林地帯となっている。金剛山,漢拏(かんな)山とともに三神山の一つとされ,山麓には華厳寺,双渓寺,実相寺など多数の寺院が建立されている。多数の奥深い渓谷が絶好の隠れ家を提供しており,古くから政治的,社会的被抑圧者の国内亡命地とされてきた。日本植民地時代には,反日ゲリラ闘争の根拠地あるいは戦争非協力者の逃亡地となった。朝鮮戦争を前後した時期には,共産党員による武装闘争が展開された。山麓一帯では薬草採取,ジャガイモなどの雑穀栽培を主とする粗放的農業が営まれ,韓国でも開発の遅れた地域の一つであったが,1970年代以後,山麓斜面が草地に造成され,大規模な牧畜業もみられるようになった。また,智異山国立公園に指定されたことを契機に,道路の整備など観光開発が進められている。
執筆者:谷浦 孝雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報