暗峠(読み)クラガリトウゲ

デジタル大辞泉 「暗峠」の意味・読み・例文・類語

くらがり‐とうげ〔‐たうげ〕【暗峠/闇峠】

大阪府東大阪市と奈良県生駒市との境にある、生駒山地の峠。近世、暗越奈良街道の交通の要地。

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日本歴史地名大系 「暗峠」の解説

暗峠
くらがりとうげ

生駒山南の鞍部にある峠で標高四五〇メートル。「河内名所図会」にはくら峠とあり「生駒の山脈続て小椋山といふ故に椋ケ根の名あり。一説には此山の松杉大ひに繁茂し暗かりければかく名付るともいふ。天正の頃豊臣秀長郡山の城を築き給ふ時ことことく大木を伐取しより今に大樹なし」と記すが、鞍ヶ嶺の意であろう。

難波・大坂から枚岡ひらおか(現東大阪市)を経て峠を越え奈良に至る道を暗越大坂街道といい、平城京を中心として発達した道で、春日大社第三殿・第四殿に枚岡神社の祭神を勧請しているのも興味深い。嘉禎二年(一二三六)の春日供物運上路注進状(春日神社文書)にみえる生馬越路である。


暗峠
くらがりとうげ

生駒山頂南西方にあり、東は奈良県生駒市。標高四五五メートル。大和・河内の境で、奈良街道が通る。昔樹木がうっそうと茂り、昼でも暗かったのでこの名が付いたといわれ、「河内鑑名所記」に「闇上くらかり峠」とある。「河内名所図会」はくら峠として「生駒の山脈続て、小椋山といふ故に、椋ケ根の名あり」と記す。また当地では、峠付近が鞍のようなのでくらが峠といったのが暗峠に転じたという。現在も石畳が残る。暗峠越奈良街道は大坂より高井田たかいだ下小坂しもこさか菱江ひしえ松原まつばら水走みずはい豊浦とようらを通り暗峠に達する。豊浦村の北西字一本松いつぽんまつより峠まで三三町・道幅二間(豊浦村誌)。この峠は軍事上の要地で、大坂冬の陣のとき徳川家康は遠藤慶隆に守備を命じている(譜牒余録)

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改訂新版 世界大百科事典 「暗峠」の意味・わかりやすい解説

暗峠 (くらがりとうげ)

大阪府東大阪市と奈良県生駒市との境界をなす生駒山地鞍部にある峠。標高455m。大阪と奈良を最短直線で結ぶ奈良街道(国道308号線)が通る。古代から生駒越えの重要な峠で,《古事記》《万葉集》にみえる日下の直越(ただごえ)とする説がある。江戸時代には大坂から大和・伊勢方面への往来でにぎわい,数軒の宿屋と掛茶屋,高札場があったが,明治中期の関西本線,大正初期の近鉄奈良線開通以後急速にさびれた。峠には石畳の道が残り,ハイキングコースとなっている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「暗峠」の意味・わかりやすい解説

暗峠
くらがりとうげ

大阪府と奈良県との境にある生駒(いこま)山地のほぼ中央にある峠。生駒山頂の南約1.5キロメートルの鞍部(あんぶ)にあり、暗越奈良街道が通る。標高455メートル。大阪と奈良を結ぶ最短コースで、近世には大坂から奈良、初瀬(はせ)、伊勢参詣(いせさんけい)路として往来が盛んで、茶屋、旅舎が多かったが、明治になって現在のJR関西本線、近畿日本鉄道奈良線が開通し、しだいに衰えた。延長40メートル、幅1メートルの石畳道は1972年(昭和47)の道路拡幅工事で周囲をコンクリートで固められた。

[前田 昇]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「暗峠」の意味・わかりやすい解説

暗峠
くらがりとうげ

大阪府東大阪市と奈良県生駒市の境,生駒山山頂の南にある峠。標高 455m。生駒山地のほぼ中央を東西に横切る暗越 (くらがりごえ) 奈良街道上にあり,大阪,奈良を結ぶ最短コースとして古くから発達。峠集落や石畳もみられたが,1914年大阪電気軌道 (現近畿日本鉄道奈良線) が生駒トンネルの完成とともに開通し,現在の峠道は石畳にのみその面影をとどめ,ハイキングに利用されている。

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世界大百科事典(旧版)内の暗峠の言及

【生駒山】より

…山地の成因については,著しい断層の露頭も見いだされ断層運動による地塁や傾動地塊と考えられていたが,新しく基盤褶曲が提唱された。大阪平野と奈良盆地をつなぐ道が山地を越えているが,暗(くらがり)峠(455m)の奈良街道が古来有名である。1914年に大阪電気軌道(現在の近鉄)の生駒トンネルが開通して,奈良~大阪間の交通が容易になった。…

※「暗峠」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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