人の目で直接見ることができない暗夜や霧の中の物体や人物などを映し出す装置。略称NVD。アクティブ方式とパッシブ方式とがある。
アクティブ方式は一般にノクトビジョンnoctovisionとよばれる。その動作原理は、赤外線を当てた被写体から反射してきた赤外線をイメージ管(または暗視管)とよばれる電子管で受ける。イメージ管の光電面はその上に結んだ赤外線像の濃淡に応じて光電子を放出するので、赤外線の像は電子の密度変化に変換される。そこで、変換された電子を電子レンズの作用をする電極の間を通過させ、加速、集束させると、15~20キロ電子ボルトのエネルギーをもった電子が蛍光面に当たり、蛍光面を発光させて目に見える像が得られる、というものである。この装置は光電子放出を利用しているため、被写体と再現される像の間の遅延時間がきわめて短く、しかも良好な信号対雑音比で観測をすることができる。第二次世界大戦中、軍事目的に開発されたが、一般の目的では、通常の照明を当てられない神事や、動物の夜の生態などをテレビカメラでとらえるのに利用され、さらに赤外線顕微鏡や温度計などにも利用されている。なお、ノクトビジョンは本来商品名であったものが一般名化したものである。また、noctoはラテン語で夜の意味である。
パッシブ方式は一般にイメージインテンシファイアimage intensifier(略称I.I.(アイアイ))、あるいはスターライトスコープstarlight scopeなどとよばれる。その動作原理は、肉眼では認識することができない暗闇(くらやみ)中の物体や人物などから出るわずかな可視光や赤外線を高感度の光電子増倍管photomultiplier(略称ホトマル、またはPMT)で受けて増幅し、可視化するものである。肉眼では見ることのできない天体からの微少な光を増幅して見ることも可能である。1960年代からは軍事目的にも利用され、ベトナム戦争で使われた。イメージインテンシファイアの名は、アクティブ方式と区別してパッシブ方式の暗視装置に適用されるが、広義にはアクティブ方式も含めた暗視装置全般をさすのに使われることもある。
なお、暗視装置の応用例として、自動車の安全運転支援装置も開発されている。
[吉川昭吉郎]
ノクトビジョンとも呼ばれ,夜間,暗闇で相手に気づかれず物を見る装置である。第2次世界大戦中,1943年にドイツで戦車砲の夜間照準用に開発され,翌年に東部戦線で使用された。アメリカが開発した小銃用夜間照準具,スナイパースコープは45年に沖縄戦線で初めて使用された。初期のものは赤外線で対象物を照らし,赤外線像を可視像に変換して観測するものである。その後50年代に,像の明るさを電子的に数万倍に増強する技術が開発され,星明りで物を見るスターライトスコープ(微光暗視装置)が出現した。物体は暗闇でも微弱な赤外線を発しているが,この赤外線を視認する技術が進歩し,68年ごろ,まったく照明なしに遠距離の物体も観測できる装置,FLIR(forward looking infrared)がアメリカで出現した。このような各種暗視装置は各国ですでに実用化され,暗闇における各種火器の照準,戦場監視,車両操縦,ヘリコプターの離着陸を可能にし,従来の夜間戦闘形態を大幅に変えた。なお,暗視装置は軍事目的以外にも,警察での使用,あるいは動物の生態観察用など多方面で使用されている。
執筆者:藤沢 彰
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発を進めるイプシロンSよりもさらに小さい。スペースワンは契約から打ち上げまでの期間で世界最短を...
12/17 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
11/21 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
10/29 小学館の図鑑NEO[新版]動物を追加
10/22 デジタル大辞泉を更新
10/22 デジタル大辞泉プラスを更新