最密接関係地法(読み)さいみっせつかんけいちほう

日本大百科全書(ニッポニカ)「最密接関係地法」の解説

最密接関係地法
さいみっせつかんけいちほう

もっとも密接に関係する地の法を簡略化した言い方。国際私法上の用語。19世紀中ごろにサビニーが確立した現代国際私法の基本的な考え方は、異なる国籍を有する者の間での婚姻や、本国と異なる国で死亡した者の相続といった複数の国と関係をもつ法律関係にはそれぞれ「故郷」(「本拠」ともいう)があり、その故郷の法を適用することがふさわしい解決を与えるとされており、その故郷にあたる地を最密接関係地と表現している。

 日本の最初の国際私法典である「法例」(明治31年法律第10号)はサビニーの考え方を基礎にしており、これを受け継いでいる「法の適用に関する通則法」(平成18年法律第78号)も原則として、最密接関係地法を適用することが基本的な方針となっているといってよい。とはいえ、多くの規定では直接的に最密接関係地法によると定めるのではなく、たとえば、人の行為能力はその人の本国法によると定める第4条1項のように、最密接関係地を類型的にさし示す要素として、本国、常居所地、目的物所在地、結果発生地などの連結点(特定の地の法を導き出すことのできる場所的要素。連結素ともいう)を定めている。しかし、契約などの法律行為について当事者による準拠法選択がない場合(同法8条1項)、また、婚姻の身分的効力夫婦財産制離婚について当事者の本国法も常居所地法も一致しない場合(同法25条・26条1項・27条)のように、直接的に「最も密接に関係する地の法による」と定めている例もある。同様に、事務管理・不当利得不法行為の成立・効力について準拠法決定ルールを一応は定めつつ、事情に照らしてそのようにして「適用すべき法の属する地よりも明らかにより密接に関係する他の地があるときは、当該他の地の法による」と定める規定もある(同法15条・20条)。これらは、類型的に設定された連結点による準拠法決定では最密接関係地法の適用を確保できない場合に一般原則に戻ることを定めたものである。

 なお、国際私法では、最密接関係地法の適用という価値よりも他の価値を優先させている例もある。たとえば、当事者に準拠法の選択を認めている契約などの法律行為や夫婦財産制(法の適用に関する通則法7条・9条・26条2項)、事後の準拠法変更に限ってではあるが、これを認めている事務管理・不当利得・不法行為(同法16条・21条)については、当事者が自ら選択した地の法によるほうが予見可能性を確保できるとか、紛争処理が容易になるといったメリットを重視したものである。また、後見開始の審判等や失踪(しっそう)宣告の準拠法は、日本でその手続をすることができる場合を複数定めたうえで、それらの場合にはつねに日本法によると定めており、これも最密接関係地法の適用の例外であるということができよう。

[道垣内正人 2022年4月19日]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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