人が国籍を有する国の法。重国籍者や無国籍者の本国法は、後述の通り一定のルールにより定められる。大陸法系の国際私法上、能力や家族関係の準拠法(適用される法律)とされることが多く、本国法主義を採用している。これに対し、英米法系の国際私法ではこれらの問題について住所地法を準拠法とする住所地法主義が採用されている。大陸法系に属する日本の「法の適用に関する通則法」(平成18年法律第78号)は行為能力、親子関係の成立、相続・遺言など本国法を準拠法とするものが多い(同法4条、28~31、36・37条)。ハーグ国際私法会議では、両者の違いを止揚し解消するため、常居所habitual residence(人が現実に日常的に居住し生活している場所)という概念を新たに導入し、日本も1989年(平成1)の国際私法の改正でこれを大幅に取り入れたので、日本はもはや本国法主義を採用していると単純にいうことはできない。もっとも、たとえば、婚姻の効力の準拠法決定にあたって、A国法をともに本国法とし、B国にともに常居所を有する夫婦の場合、A国法を優先して準拠法とする仕組みとなっている点で、本国法優位の国際私法となっているということができよう(「法の適用に関する通則法」25条)。
本国法主義のもとでは国籍を連結点(特定の地の法律を導き出すことのできる場所的要素。連結素ともいう)とするため、重国籍や無国籍の場合に本国法を決定する必要がある。「法の適用に関する通則法」によれば、重国籍の場合には、そのなかに日本国籍があれば日本法、外国国籍のみの重国籍の場合には、そのなかにその者が常居所を有する国があればその国の法、そのような国がなければ、より密接に関係している国の法を本国法とする(同法38条1項)。無国籍者の場合には、常居所地法を本国法とする(同法38条2項)。また、国籍を有する国が不統一法国である場合にも本国法を決定する必要があり、その国の規則があればそれにより、それがなければ当事者にもっとも密接に関係する地域の法をその者の本国法とするとされている(同法38条3項)。なお、同法第25条などのように、本国法が同一である場合という要件の判断にあたっては、個別に本国法を特定してから一致するか否かを判断する。したがって、夫婦ともにアメリカ人であっても、同法第38条3項により、夫についてはニューヨーク州法が本国法とされ、妻についてはニュージャージー州法が本国法とされた場合には、本国法は同一ではないとされ、仮に夫婦ともに日本に常居所があれば日本法がその夫婦間の問題に適用されることになる。
[道垣内正人 2022年4月19日]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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