日本大百科全書(ニッポニカ) 「新上五島」の意味・わかりやすい解説
新上五島(町)
しんかみごとう
長崎県西部、南松浦郡(みなみまつうらぐん)にある町。2004年(平成16)南松浦郡の若松(わかまつ)、上五島、新魚目(しんうおのめ)、有川(ありかわ)、奈良尾(ならお)の5町が合併して成立。五島列島のほぼ北半分を占める島嶼(とうしょ)からなり、中通島(なかどおりじま)と若松島(わかまつじま)(古名、狩俣島(かりまたじま))を中心に、頭ヶ島(かしらがしま)、祝言島(しゅうげんじま)、折島(おりしま)、柏島(かしわじま)、串島(くしじま)、日ノ島(ひのしま)、有福島(ありふくじま)、漁生浦島(りょうぜがうらしま)、その他の属島からなる。中通島には国道384号が通じ、頭ヶ島、中通島、上中島、若松島、日ノ島、有福島、漁生浦島は、架橋されて陸路で結ばれる。鯛ノ浦(たいのうら)港と奈良尾港は長崎港、有川港は長崎港と佐世保(させぼ)港、友住(ともすみ)港は佐世保港、青方(あおかた)港は博多(はかた)港に高速船やフェリーが通じる。
古くから漁業が盛んで、現在も町の主産業は漁業である。有川湾は定置網漁業でのブリの水揚げが多い。奈良尾港は西日本有数の大型巻網漁業の基地で、ブリの定置網漁業も行われている。若松地区では一本釣りのほかタイ・ハマチなどの養殖、上五島地区ではハマチの養殖、有川地区の鯛ノ浦湾では真珠の養殖も行われている。青方湾の折島、柏島付近には5基440万キロリットルの石油の洋上備蓄基地がある。
青方は鎌倉御家人青方氏の本拠地で、青方文書は松浦(まつら)党関係史料、中世漁業関係史料として貴重。五島列島はカトリックの信仰厚い地で、キリシタンの伝統をひくカトリック集落が多い。青砂ヶ浦教会(あおさがうらきょうかい)は1910年(明治43)献堂、頭ヶ島教会は頭ヶ島の石を用いた石造建築が全国的にも珍しく、ともに天主堂として国指定重要文化財。大曽教会(おおそきょうかい)と福見教会(ふくみきょうかい)は大正時代の赤れんが造。ほかに米山(こめやま)、仲知(ちゅうち)、江袋(えぶくろ)、若松大浦、鯛ノ浦、船隠(ふなかくし)、佐野原、桐(きり)、土井ノ浦、中ノ浦、跡次(あとつぎ)、冷水(ひやみず)などの教会がある。浜串教会近くの漁港には奈良尾船団を見守るマリア像がそびえる。
町域は西海国立公園(さいかいこくりつこうえん)に含まれ景勝地が多い。近年は観光にも力を入れている。若松港は、海域公園に指定された若松瀬戸に臨み、西海国立公園の観光基地。奈良尾神社の樹齢650年のアコウは国指定天然記念物、極楽寺にある銅造如来(にょらい)立像は国指定重要文化財。面積213.99平方キロメートル、人口1万7503(2020)。
[編集部]
〔世界遺産の登録〕頭ヶ島の集落は、2018年(平成30)、ユネスコ(国連教育科学文化機関)により「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」の構成資産として、世界遺産(文化遺産)に登録された。
[編集部 2018年9月19日]