有明山(読み)ありあけやま

精選版 日本国語大辞典 「有明山」の意味・読み・例文・類語

ありあけ‐やま【有明山】

  1. 長野県松本盆地北西部の山。北アルプス前山。二二六八メートル。戸放(とばなし)ケ岳。歌枕

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日本歴史地名大系 「有明山」の解説

有明山
ありあけさん

穂高ほたか町、北安曇郡松川まつかわ村の西方にそびえる標高二二六八メートルの独立した山で、穂高町・松川村の境に位置している。黒雲母花崗岩からなる。「駿河なる富士信濃にとりはなし煙にまかふ秋の夕霧(信府統記)の古歌にみられるように「信濃富士」ともよばれている。正保年間(一六四四―四八)の国絵図(上田市立博物館蔵)取放とはなち山とし、享保九年(一七二四)の「信府統記」は「有明ありあけ山」として、「有明山ノ名ヲ戸放カ岳トモ云フ、其子細ハ往昔日神岩戸ニコモラセタマヒシトキ、天下黒闇トナリケルユヘ、手力雄命岩戸ヲ取リテ投ケタマヒシカバ、岩戸此所ニ落チ止レリ、夫ヨリ天下又明カニナリケル故ニ、此山ヲ有明山トモ、戸放カ岳トモ云フトナリ、又鳥放カ岳トモ云フ子細ハ、此山ニ鶏ニ似タル鳥アリテ、時ヲ作ルユエトカヤ、一説ニ此山月ノ比ハイツモ陰ナク照スニ依テ、有明山ト云フトモ見ヘタリ」とある。

西行の歌に「信濃なる有明山を西に見て心細野の道を行くなり」(信府統記)とある。

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改訂新版 世界大百科事典 「有明山」の意味・わかりやすい解説

有明山 (ありあけやま)

飛驒山脈(北アルプス)南東部,長野県安曇野(あづみの)市の旧穂高町と北安曇郡松川村との境界にそびえる山。標高2268m。安曇野からは急峻な富士山形の山容にみえることから信濃富士,有明富士などともいい,古来詩歌によくよまれた。中生代白亜紀の花コウ岩で構成され,山頂部は南北に細長く,東麓に有明神社の奥社がある。中世修験道場として発展したが,現在は訪れる人も少なく静寂な山である。中房温泉からの登山路がある。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「有明山」の意味・わかりやすい解説

有明山
ありあけやま

長野県松本盆地の北西に位置する北アルプスの前山。標高2268メートル。花崗(かこう)岩からなり、山容が富士に似ているので古来、地元では信濃富士(しなのふじ)とよんでいる。山中には大小の滝があり、有明神社がある。

 古来から歌枕(うたまくら)として知られ、「かたしきの衣手(ころもで)寒く時雨つつ有明山にかかるむらくも」(後鳥羽院(ごとばいん))などと歌われた。山名は、天照大神(あまてらすおおみかみ)が岩戸にこもって天下が暗闇(くらやみ)になったとき、手力雄命(たぢからおのみこと)が岩の戸を投げ、その岩がここに落ち、天下が明るくなった山なので有明としたとの伝説がある。中世以後、修験(しゅげん)道場となり、近世享保(きょうほう)年間(1716~1736)からは行者の登山が行われている。

[小林寛義]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「有明山」の意味・わかりやすい解説

有明山
ありあけやま

長野県西部,飛騨山脈の前山にあり,松本盆地の西縁にそびえる山。標高 2268m。花崗岩から成り,山容が富士に似ているので,信濃富士とも呼ばれる。江戸中期頃から信仰の対象となり,大正末期までは信者の登山が多かった。山頂に有明神社の奥社がある。南麓の中房川の谷には中房温泉,有明温泉があり,別荘地,ゴルフ場などもある。付近は中部山岳国立公園に属する。

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