翻訳|organicism
一般に,あらゆるものを有機体として見る立場で,有機体説ともいう。歴史上,農牧社会でとくに支配的な思想であったが,近代社会では機械論が有力になってきたので,それとの対立において主張されることが多い。有機体の典型は生物であるから,生物をモデルとしてすべてを見る立場ないしすべてを生き物として見る立場といってもよいが,とくに〈有機体論〉と呼ぶときには限定して用いる。すなわち,同様に生物をモデルにする場合でも,生物のもつ〈生きている〉という働きに注目してそこに生物体以外の独自の実体を想定すれば〈生気論〉になり,生物のもつ目的性に注目すれば〈目的論〉になる。これに対し〈有機体論〉は生物の体制に注目する。つまり生物の客観的な面(生物体)をとりあげて,これをモデルとする思考形式をいうのである。全体を部分の集合であると考える機械論に対しては上記の三つとも対立しているが,生気論や目的論に対して有機体論は構造や機能の面から扱うことを特質としている。〈有機体〉とは機能を有する体制のことなのである。
有機体は種々の特質をもっているが,いまその基本的なものをとりあげると,(1)自己形成,(2)自己保存,(3)自己増殖である。自己形成は,量的には成長であるが,外部から加工を受けて大きくなるのではなく,外部的なものを内部に摂取し同化して成長する。さらに質的には内部で分化・分節をとげ,機能にふさわしい組織・器官をみずから形成して体制を複雑化する。つまり〈有機的組織organism〉をつくるのである。それらは部分ではなく分肢であって,個体を離れては機能をもちえない。自己保存は外から破壊しようとするものに対して防御し,また損傷を回復する働きであり,有機体の特質とされる感受性や興奮性も自己保存の形式と考えられる。自己増殖は自己と同一種の個体を生殖し,種族を保存しようとすることである。以上の三つにすべて〈自己〉という文字が冠されているのは,有機体がみずから働く自発性をもつということであるが,個体として存在するということでもある。有機体論はすべてのものをこのように誕生と成長と死をもつ個体として取り扱うのであって,たとえば社会有機体説は国家や社会をこのようなものとしてとらえるしかたにほかならない。
有機体論は機械論と対立する考え方であるが,機械そのものが発達をとげた結果,機械論のモデルはかつての機械時計ではなくコンピューターや原動機を組み込んだ自動制御機能をもつ有機化された機械になってきており,機械の自己増殖の可能性もすでに証明されている。機械の理想は有機体なのである。他方,有機体も機械論的に説明ないし処理できる部分が増加してきており,生物体を機械と見る主張も有力である。しかし有機体は環境と切り離しては考えられないので,生態学や環境科学ではなお有機体論が大きな役割を果たしている。
→機械論
執筆者:坂本 賢三
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…機械論の再出発は17世紀初頭のヨーロッパで行われた。その背景には中世における建築技術の発達や機械時計の完成,さらに大砲の開発による投射体の運動の研究や航海術の進歩に伴う位置決定の課題などがあったのであるが,17世紀はじめに,それまで支配的な自然観・社会観であった目的論的・有機体論的なアリストテレス主義と,隠れた性質を認めるヘルメス主義を批判してF.ベーコンが新しい要素論を唱え,デカルトが魂と物体を明確に区別して物体から内的目的や隠れた性質を排除し,自然を〈延長〉としてとらえ,運動を位置の変化として幾何学的に研究する方法を打ち立てて,近代の機械論が成立した。すなわちデカルトは,当時完成した機械であった時計をモデルとして,自然を外から与えられる運動によって〈法則〉に従って動く部分の集合であると見たのである。…
…一方,生命機械論は生物の現象を終局的に物質現象として理解する立場だが,それにいくつかのちがった考え方があることは後述する。なお新生気論,全体論,生体論(有機体論)などといった生命論の提唱もあり,実際には単純に割り切ることはできない。 生命をどう考えるかは生体の構造と機能の解釈に依存することであり,科学の発展によって異なってくる。…
…ここでは,各分野・各時代・各地域にまたがる全世界的な世界観の類型化の例を示す。
[有機体論的世界観]
世界全体を生き物と見る世界観で,世界もその内部の事物も誕生と成長の過程にあり,無定形の混沌から秩序あるものへと形成され,分化発展をとげるものとみる。したがって,世界を目的論的なもの歴史的なものと見る世界観である。…
※「有機体論」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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