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環境科学 かんきょうかがくenvironmental science

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

環境科学
かんきょうかがく
environmental science

個人や社会の生活の場所がおかれた諸条件を科学的に研究する学問。そのなかには,自然科学的,医学的,農学的,工学的なものから社会科学的なものまで含まれる。広義には,一般に生物生存のための環境条件や急激な環境変化の適応などの問題も含む。20世紀の政治・経済活動の発達に伴って,地球上の全域にわたって自然環境の破壊と資源の大量利用が行なわれ,先進工業国には大規模な都市,工業施設,交通網などが整備された。その結果として,産業廃棄物や自動車による水と空気の汚染,大都市化と交通網による騒音など居住環境の悪化,農薬や人工肥料による土壌生態系の破壊などが起こった。特に 1960年代の高度経済成長期の日本では顕著であった。その後環境問題はグローバル化し,地球温暖化オゾン層の破壊海洋汚染などの自然環境破壊,および地球人口の増加,発展途上国の経済的貧困といった問題に対処する方策を明らかにすることが,環境科学の緊急の課題となっている。

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百科事典マイペディアの解説

環境科学【かんきょうかがく】

人間をとりまく諸環境(とくに自然環境)の特性を究明し,環境破壊の防止,劣化した環境の改善などを研究する学問。生態学公衆衛生学都市工学社会工学などと密接な関連をもち,1960年代後半から公害が世界的問題になるとともに総合的科学として盛んに研究されはじめた。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

環境科学
かんきょうかがく

1960年代に入って公害が急速に広がり、人々の生活のうえに深刻な影を落とした。その結果、緊急になんらかの解決方法をみいださねばならないという社会的要請が強まり、そのなかから環境科学の萌芽(ほうが)が形成された。その動きは欧米における環境問題への学問的な取り組みと合流し、地球全域の環境を守れという主張に発展した。このようにして、「環境」ということばが人々をとらえ、公害問題を中心とした多様な環境問題を科学的に究明しようとする公然とした流れへと進んだ。以上の経過からも明らかなように、応用科学の一分野としての環境科学には、現実対応への優れた能力が求められている。
 環境科学が担わねばならない第一の主要課題は、切迫した問題である公害の解決と、その防止機能の向上にかかわるものである。そのためには、研究の推進および研究成果の適用を阻んでいる社会的条件の排除が不可欠である。たとえば「水俣病(みなまたびょう)公害」の問題はその典型を示している。工場排水中に含まれる原因物質の追究、生産工程についての原因究明、環境汚染の実態把握、被害状況・健康破壊の調査、汚染水域浄化の研究など、すべての分野に「資本主義体制の壁」が大きく立ちはだかっている。この事実は、環境科学と社会科学との接触を不可避にする。公害発生の社会的原因の究明、公害対策の実施などの面にも社会科学からのアプローチが必要とされる。
 第二の主要課題は、環境保全、さらには環境改善を実現しつつ、生産の発展を実現しうる方向の追究である。農林業の分野にはこの課題についての成果が豊富にみられる。他方、公害原因物質となっている化学物質を生産する分野では、生産に伴って生じる廃棄物などを有害な状態で環境内に排出させない方法の探究が行われなければならない。化学物質を日常生活のなかで使用する場合についても同様の課題が存在する。現時点で問題がないとされている排出状態も含めて、広く現行の生産・開発活動が長期間継続する場合の将来の状態を予測する研究が重要である。
 これらの研究にとって、地球全域にわたる恒常的な観察・測定体制を確立することはきわめて急がれる課題である。しかし、第一の課題の追究が不十分な現状にあって、第二の課題への関心は希薄にならざるをえない実状にある。
 前記のような課題を対象とする環境科学はきわめて学際的であるが、それは次のような理由による。
(1)環境科学の課題が実用性という性格を強くもっていることによる。環境に働きかける人間の側に複雑な社会的条件と多様な目的がある。
(2)過去に生じた環境問題について、そのおりおりに既存の学問分野(たとえば、物理学、化学、生物学、地質学、地理学、農学、工学、医学、社会学など)からの追究があり、その分野に知識の蓄積がみられることによる。
(3)環境そのものが多次元の構造をもつことによる。それは既存の学問の方法によってさまざまなサブシステムとして区分され、それらの個別領域における活動が、それぞれに実際上の課題に強く引き付けられ個別化されている。今日、実りある学際的研究は実現していない。
 環境科学が総合科学としての水準に達するうえで、個別領域の成果の交流が必要であるが、方法・概念の不統一がそれを著しく阻害している。さらに、学問の全体系を構築するうえで不可欠な理論面でも研究はきわめて遅れている。そうした現状にあって、カテゴリー論と物質循環論などは注目される。前者にあっては、物質・時間・空間・エネルギー・多様性の基本カテゴリーが提案されており、後者にあっては、開放的循環と閉鎖的循環の二重構造システムが検討されている。
 環境科学にはもう一つの領域がある。それは、基礎的な概念である「環境」の規定についての問題である。「環境」を、感覚的に知覚されうる範囲とする、という主張から、人間を取り巻く外界の一部あるいは全部とする、というものまで、実に多くの議論がある。この議論の過程で、環境の限界はいやおうなしに拡大すると同時に、環境内部に存在する構造の理解へと進んでいる。この問題は、人間と環境との間の相互の関係を、どちらに重点を置いてみるかということと深く関係している。かつては環境が人間活動を規定するという側面に注目したが、今日では人間活動が環境に与える変化に関心が集まっている。その際には環境に内在する歴史法則が問題にされる。すなわち、環境は人為性を許容する方向に進むのか否かということである。この問題は、同時に、人間は環境の進化がつくりだした多様な物質存在による安定状態を、さらに継承し発展させうるかどうか、という問題とも理解される。すなわち、環境に働きかける人間の活動のなかに法則的発展をみるか否か、ということでもある。
 以上のように環境科学は現実的な問題から基礎的な問題まできわめて多岐にわたる課題を抱えてようやく発足したばかりの状態にあり、当面はさまざまな個別分野の活動が中心になると考えられる。[川又淳司]

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