哲学史家。長崎に生まれる。1898年(明治31)東京帝国大学文科大学を卒業。真宗大学教授を経て、1907年(明治40)京都帝国大学文科大学助教授に就任し、1909年ドイツのハイデルベルク大学でウィンデルバントに師事し、西洋近世哲学史を研究。翌1910年帰国し、哲学・哲学史第四(西洋哲学史)講座の教授となる。1931年(昭和6)定年退職。同大学名誉教授、大谷(おおたに)大学教授を歴任。1948年(昭和23)学士院会員になる。一貫して哲学史的関心を保持し、西洋近世哲学史の先駆的研究に貢献した。その立場はカントの理想主義であり、ルネサンスから新カント派に至る理性による「我」の自覚過程を明らかにした『近世に於(お)ける「我」の自覚史――新理想主義と其(その)背景』(1916)は多くの読者を得、改訂版も出版された。『デカルト』(1925)と『デカルト省察録』(1936)は本格的な研究書として評価されている。そのほかカントの「永遠平和のために」を哲学史の立場から究明した『カントの平和論』(1922)、『哲学史的小品――ルソー・カント・ロッツェ』(1948)、『ルネッサンス及び先カントの哲学――西洋近世哲学史第一冊』(1949)がある。昭和26年9月18日死去。ノーベル物理学賞受賞の理論物理学者朝永振一郎は長男である。
[原島 正 2016年9月16日]
『朝永先生の思い出編纂会編・刊『朝永三十郎先生の思い出』(1957)』▽『野田又夫著『哲学の三つの伝統』(1984・紀伊國屋書店/岩波文庫)』
明治〜昭和期の哲学者 京都帝国大学名誉教授。
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…東京の生れ。父は哲学者朝永三十郎。1929年京都大学理学部を卒業,31年仁科芳雄の京大出張講義聴講のおり認められ,翌年理化学研究所に新設早々の仁科研究室に入った。…
※「朝永三十郎」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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