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朝鮮神話 ちょうせんしんわ

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世界大百科事典 第2版の解説

ちょうせんしんわ【朝鮮神話】

朝鮮神話には伝承形態によって《三国史記》や《三国遺事》など古典に記録されている文献神話と,口伝神話の2種類がある。後者には現在シャーマンが口誦している巫歌神話と神話的昔話が含まれる。朝鮮神話全体の特徴は,(1)原初的形態を保持している,(2)巫俗や農耕儀礼など宗教儀礼との関係が密接である,(3)始祖神話の類が多く族譜意識が強い,(4)宇宙起源神話は神話記録者である儒学者の合理主義によって記録されなかったため,口伝のものが多い,(5)歴史的に高句麗・百済・新羅の三国鼎立が長く続いたため,神話が統一整序されず多様な伝承形態をとっている,などである。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

朝鮮神話
ちょうせんしんわ

朝鮮神話はその伝承形態から、『三国史記』(1145)や13世紀末の『三国遺事(いじ)』などの古典に記録されている文献神話と、口伝(くでん)神話の2種類に分けられる。そして後者には、シャーマンの神歌として口誦(こうしょう)されている巫歌(ふか)神話と、神話的内容が口伝によって伝承されてきた神話的昔話が含まれる。その特徴としては、〔1〕原初的形態を多く保持している、〔2〕宗教儀礼(巫俗(ふぞく)信仰や農耕儀礼など)との関係が密接である、〔3〕始祖神話の類が多く、族譜意識が強く作用している、〔4〕創世神話が、神話記録者である儒学者の儒教的合理主義により文献神話として記録されなかったため、口伝のものが多い、〔5〕紀元前後から三国鼎立(ていりつ)が続いたため、神話が統一、整序されることがなく、多様な定着をしている、などの諸点があげられる。
 文献神話には、高句麗(こうくり)の朱蒙(しゅもう)神話、百済(くだら)建国神話、新羅(しらぎ)の朴赫居世(ぼくかつきょせい)、金閼智(きんあっち)、昔脱解(せきだっかい)、加羅(から)の金首露(きんしゅろ)、耽羅(たんら)の三姓(高・良・夫の三姓)始祖神話、古朝鮮の檀君(だんくん)神話、高麗(こうらい)の始祖神話などがあるが、いずれも朝鮮の古代王朝の起源ないしは王権神話に限定されており、創世神話そのほかを欠いている。文献神話のおもなモチーフとしては、始祖の山上降下、日の御子(みこ)信仰、日光感生要素、農耕祭式、竜蛇信仰、海上他界信仰、箱舟漂流要素、卵生要素などがある。すでに三品彰英(みしなしょうえい)(1902―71)などの詳細な研究があるが、そこに表出された始祖の山上降下、日光感生要素は北方大陸系であり、卵生、箱舟漂流要素は南方海洋系である。南部の韓(かん)族の神話は、南方系の稲作農耕文化の系統を引き、高句麗の朱蒙神話は、北方系の遊牧文化と南方系の両要素の結合がみられる。また、支配者の神聖性の根源を天と海に求める観念は、日本の天孫降臨神話と密接な関係を示すものである。このように両国の神話は、系統的な関係ばかりでなく構造的にも類似しており、沸流(ふる)・温祚(おんそ)兄弟の百済建国神話は、日本の神武(じんむ)東征神話と構造的に類似している。また高句麗、新羅の最初の三王は、日本と同様にインド・ヨーロッパ諸族神話的な社会的三機能(主権、軍事、豊穣(ほうじょう))ないし宇宙三界(天、地、水)を代表することが明らかになり、構造的な類似が指摘され、さらに朝鮮神話とインド・ヨーロッパ諸族神話との関係も証明されている。檀君神話は北方ユーラシアの熊(くま)信仰と深い関係があり、ことにツングース諸族における熊や虎(とら)と人間との交婚譚(たん)や、熊祖神話との親縁関係が求められる。文献神話のなかには、このほかわずかではあるが、朱蒙神話にみえる大母神の五穀種の授与や、済州(さいしゅう)島の穀種漂着神話など、農耕起源神話が認められる。
 一方巫歌神話には、宇宙起源をうたう巫歌や巫祖(ふそ)神話(捨姫(すてひめ)神話)のほかに、家神、産神、農神、火神、軍神、村落守護神など、朝鮮巫俗の神統譜に基づく神々の由来行跡を語る「本解(ポンプリ)」という叙事巫歌があるが、これは現在でも村落祭や各種の巫祭のおりにシャーマンによって謡われている生きた神話である。「本解」は仏教や道教の諸要素を吸収し、高度の習合現象を示しているが、その根幹はシャーマニズム的世界観からなっている。巫俗神話のなかでもっとも重要なものは宇宙起源の巫歌であり、そこでは天地の開闢(かいびゃく)とその後の整備、各種文化の起源、国家や村の始原など、すべてのものの原初生成がうたわれている。天地分離、天父・地母、漂う国土、死体化生(けしょう)、複数の日月、射陽説話、各界分治、花甕(がめ)のすり替えなどのモチーフを含むこの朝鮮の宇宙起源神話は、日本神話との間に系統的、構造的対応関係や類似が認められている。このほか神話的昔話としては、裳(もすそ)に土を入れて運び、済州島をつくったというソルムンデ姥(ハルマン)など、巨人による国土(宇宙)創造神話や兄妹結婚型、そのほかの洪水神話、日月起源神話(日妹、月兄)、日食・月食の由来などがある。[依田千百子]
『『三品彰英論文集 第2~5巻』(1971~73・平凡社) ▽吉田敦彦編『比較神話学の現在』(1975・朝日出版社)』

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世界大百科事典内の朝鮮神話の言及

【朝鮮】より

…このように西方や北方の勢力を結集したモンゴルの侵略とこれに対抗,あるいは追従するなかで,民族文化を形成していったことをうかがうことができるであろう。朝鮮神話
[侵略に対処する山城]
 朝鮮はユーラシア大陸の東端にある半島で,大陸の諸民族の中では比較的民族間の戦争の少ないところである。しかし,日本のように民族間の戦争をほとんど意識しない社会とは異なり,日常生活の中でもこの点に留意してきた。…

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