木タール(読み)モクタール(その他表記)wood tar

翻訳|wood tar

デジタル大辞泉 「木タール」の意味・読み・例文・類語

もく‐タール【木タール】

木材乾留で生じる黒褐色油状物質アルコール芳香族炭化水素フェノール類などを含む。溶剤燃料防腐剤などに用いるほか、精製して薬用クレオソートを得る。

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精選版 日本国語大辞典 「木タール」の意味・読み・例文・類語

もく‐タール【木タール】

  1. 〘 名詞 〙 ( タールは[英語] tar ) 木材を乾留したとき得られる液体うち下の層のもの。黒褐色で粘り気が高く、一部は木酢液にとけこんでいる。アルコール、エステル、フェノール、ピリジンなどを含み、分留して、溶剤・燃料・防腐剤などに利用される。〔舶来語便覧(1912)〕

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改訂新版 世界大百科事典 「木タール」の意味・わかりやすい解説

木タール (もくタール)
wood tar

木材乾留や製炭のとき発生するガスを冷却すると液状物が生ずるが,そのうち木酢液をとった残りである。広葉樹木タールの場合,軟ピッチ65%が主成分で,重油(比重1.04)10%,軽油(比重0.97)5%などが含まれる。これらは木材に存在したものではなく,木材成分が熱で分解し,一部はさらに重合して生じたものである。重油のうち200~220℃で蒸留される部分(比重1.03~1.09)はグアヤコールなどフェノール成分の混合物で,クレオソートと呼ばれている。クレオソートは医薬にも使われるが,木材防腐剤としての用途が著名である。木タールはそのまま燃料としても使われる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「木タール」の意味・わかりやすい解説

木タール
もくたーる
wood tar

木材を乾留して得られる液体を静置すると二層に分かれるが、そのうちの上層を木酢(もくさく)といい、下層の黒褐色の粘液を木タールという。木タールは上層の木酢に一部溶けているが、これは可溶性木タールまたは軽木タールといい、これに対し下層の木タールは重木タールという。木タールの主成分は、フェノール、クレゾール、グアヤコールなどのフェノール類、酢酸メチルなどのエステル、バレルアルデヒド、プロピオンアルデヒドなどのアルデヒド、そのほかアルコール、ケトン、塩基、フラン、ラクトンなど多種類の化合物を含んでいる。古くは分留して、軽油、重油およびピッチなどに分け、軽油は溶剤や燃料に供し、重油は防腐剤に供したり、あるいはこれからクレオソートを製造したりしたが、現在はまったく行われていない。

[中原勝儼]

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百科事典マイペディア 「木タール」の意味・わかりやすい解説

木タール【もくタール】

木材の乾留によって得られる黒褐色の粘性のある液体。ともに留出する木酢液から放置または蒸留により分離する。各種の高級炭化水素,フェノール類のほか,酢酸などの有機酸を含む。このまま防腐剤としたり,また分留して各留分を溶剤,防腐剤,医薬(クレオソート)などに利用した。
→関連項目タールピッチ木材乾留

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「木タール」の意味・わかりやすい解説

木タール
もくタール
wood tar

木材の乾留により得られる2層の液体のうちの下層部のもので,沈底木タールまたは重木タールともいわれる。黒褐色粘稠な液体で,成分は原木の種類,操作法,装置などによって異なるが,フェノール類をはじめ多くの化合物から成っている。分留してクレオソート,軽油,重油,ピッチなどに分け溶剤,燃料や防腐剤などに利用されたが,現在はこのような利用法はほとんど行われていない。

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世界大百科事典(旧版)内の木タールの言及

【タール】より

…有機化合物を熱分解したときに得られる黒褐色の粘稠な液体をいう。石炭を乾留したときのコールタール,木材を乾留したときの木タールなどはその例である。主成分は芳香族性の炭化水素であるが,そのほかに酸素,窒素,硫黄などを含む有機化合物(酸性または塩基性を示す)も含まれている。…

※「木タール」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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