末方(読み)スエカタ

デジタル大辞泉 「末方」の意味・読み・例文・類語

すえ‐かた〔すゑ‐〕【末方】

宮廷御神楽みかぐらのとき、二組に分かれた歌い手うち、あとに歌いはじめる側。神殿に向かって右側位置する。⇔本方もとかた

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精選版 日本国語大辞典 「末方」の意味・読み・例文・類語

すえ‐つ‐かたすゑ‥【末方】

  1. 〘 名詞 〙 ( 後世「すえづかた」とも。「つ」は「の」の意 )
  2. 位置や順序の終わりの方。末の部分。
    1. [初出の実例]「初めにはうたて心あはただしきやうならん、かならずかのすゑつかたに行きて聞かむ」(出典:宇津保物語(970‐999頃)楼上上)
    2. 「ただすゑつかたをいささか弾き給ふ」(出典:源氏物語(1001‐14頃)横笛)
  3. ある期間の終わりのころ。月や季節などの終わりのころ。末のころ。
    1. [初出の実例]「秋のすゑつかた」(出典:源氏物語(1001‐14頃)若紫)
  4. 生涯の終わりのころ。晩年
    1. [初出の実例]「故院のすゑつかた」(出典:源氏物語(1001‐14頃)若菜上)

すえ‐へすゑ‥【末方・末辺】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 末の方。先端の方。すえつかた。
    1. [初出の実例]「本方は 君を思ひ出 須恵幣(スヱヘ)は 妹を思ひ出」(出典古事記(712)中・歌謡)
  3. 山の頂の方。
    1. [初出の実例]「三諸は 人の守山 本辺は あしび花咲き 末辺(すゑへ)は つばき花咲く うらぐはし 山そ 泣く児守(も)る山」(出典:万葉集(8C後)一三・三二二二)

すえ‐かたすゑ‥【末方】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 神楽(かぐら)を演奏するときの楽人たちの受け持ちで、あとに唱えうたう側。⇔もとかた
    1. [初出の実例]「〈本方〉あちめおおおお 〈末方〉おけ」(出典:神楽歌(9C後)庭燎・阿知女作法)
  3. 末の方。終わりのころ。末つ方
    1. [初出の実例]「其は明治十八年の春期の末方であった」(出典:思出の記(1900‐01)〈徳富蘆花〉五)

すえ‐ざますゑ‥【末方・末様】

  1. 〘 名詞 〙 末の方。終わりのころ。また、物の端の方。端のあたり。
    1. [初出の実例]「かひなくて、すゑざまには、年の初めの行幸などもせさせ給はずなりにければ」(出典:今鏡(1170)三)

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改訂新版 世界大百科事典 「末方」の意味・わかりやすい解説

末方 (すえかた)

宮中で行われる儀式音楽,御神楽(みかぐら)で,神楽歌(かぐらうた)をうたう歌方の名称の一つ。末方がうたう歌を末歌(すえうた)という。歌方は本方(もとかた)と末方の二手に分かれ,本方は神殿に向かって左側に,末方は向かって右側に向かい合って座る。本方と同様に,歌の音頭(おんど)をつとめる人が笏拍子(しやくびようし)を持ち拍子を打つ。本方が先にうたい出し,そのあと末方が同じ曲をうたって応答する形となる。また,末方には,伴奏楽器の一つである篳篥(ひちきり)が属する。垂纓(すいえい)の冠に赤または緑の袍を着用。
御神楽
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の末方の言及

【御神楽】より

…その構成は,人長,和琴(わごん)1,神楽笛1,篳篥(ひちりき)1,笏拍子(しやくびようし)を打つ主唱者2人と唱和の歌方である。これを二方に分かち,神殿に向かって左を本方(もとかた),右を末方(すえかた)とし,神楽歌の本歌,末歌をそれぞれ受け持つ。儀式は人長の作法と,本・末の受け持つ神楽歌から成るが,人長の指図で座を鎮め,《庭火》の曲で各楽器の音を試みることから始まる(人長式)。…

※「末方」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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