日本植民地期の共産主義による独立運動家。忠清南道(ちゅうせいなんどう/チュンチョンナムド)礼山(イェサン)生まれ。
1920年、上海(シャンハイ)で高麗(こうらい)共産党イルクーツク派に参加した。1922年モスクワで開催された極東諸民族会議に参加し、共産党を組織するために帰国するが逮捕され、服役。1924年、ソウルで結成された「新興青年会」に参加。1925年4月、地下組織である朝鮮共産党(第一次)を創設して、同年11月に逮捕される(第一次共産党事件)。1927年、病気を装って公判途中に保釈され、ソ連に亡命したため公判は中断した。1929年、モスクワの東方勤労者共産大学で2年間学んだのち、上海で朝鮮共産党を指導するが、1934年に日本側に逮捕された。再開された公判で、懲役6年(未決勾留を含む)の判決を受ける。1939年に出獄し、光州(こうしゅう/クァンジュ)に潜伏しながら、朝鮮共産党再建のための地下組織である「京城コム(京城コミュニストグループ)」を指導した。
日本が連合国に敗北した1945年8月、ソウルに戻る。9月に朝鮮共産党を再建、責任秘書となった。同年末、モスクワの三国外相会議で朝鮮半島信託方針が決まると、これに賛成した。1946年9月、北朝鮮に脱出。11月、ソウルで南朝鮮労働党が結成されると、副委員長に選任され、北から指導を行う。1948年9月、朝鮮民主主義人民共和国が樹立され副首相兼外相となる。1950年、北朝鮮労働党と南朝鮮労働党が合併して、中央委員会副委員長となる。1953年3月、金日成により粛清され、1955年、「アメリカ帝国主義のスパイ」として死刑となった。
[武井 一]
朝鮮の共産主義運動草創期以来の活動家。非転向で1945年8月15日の解放を迎え,南朝鮮の党を統括したが,朝鮮戦争後北朝鮮で粛清され波乱の生涯を閉じた。忠清南道礼山郡出身。京城高等普通学校生として三・一独立運動を体験後1920年上海に渡り,高麗共産党イルクーツク派(のちの火曜派)の組織に加わり,帰国して25年の朝鮮共産党創立に参画。同年末逮捕されたが,法廷で裁判長に眼鏡を投げつけ精神錯乱を装って病気保釈をかちとるとそのまま国外に逃走した。32年上海で逮捕されたが39年出獄後京城帝大生等の地下組織ソウル・コムグループを指導。光州付近の煉瓦工場労働者として解放を迎えると,組織を持つ強味で45年9月ソウル中心に再建された朝鮮共産党の主導権を握り,46年以降激烈な反米人民抗争を指導していく。あけひろげな大衆政治家というより冷徹な組織指導者型で,46年秋以後は逮捕を避けて北朝鮮に移り,そこから南朝鮮労働党(朝鮮労働党)の地下組織を指導する一方,48年朝鮮民主主義人民共和国創建とともに副首相兼外相となったが,朝鮮戦争停戦後の53年8月,突如〈アメリカのスパイ〉の名目で党を除名され,その指導下の南労党グループ李承燁ら12名の粛清裁判が進められた。その後55年12月分離された朴憲永自身の裁判があり,死刑宣告を受け処刑された。朝鮮戦争開戦には南労党系として特に積極的だったと思われるが,党内闘争に敗れ,その責任をとらされたものとみられる。
執筆者:梶村 秀樹
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…民族解放を第一の課題とする前者(上海派)と社会主義革命を優先させる後者(イルクーツク派)との間に激しい対立が生まれ,シベリアでは両派の武力衝突(自由市事変)も起きた。イルクーツク派に属する金在鳳,朴憲永らは23年前後に帰国し,思想団体火曜会に加入,青年団体,労農団体にも影響力を広げつつ共産党結成を準備した。25年4月17日,金在鳳ら18名がソウルで朝鮮共産党(朝共)を結成,金を責任秘書に選んだ。…
…このことが朝鮮民主主義人民共和国が南の人民をも代表していると主張しうる根拠となっている。実際,南朝鮮での左翼弾圧の強化にともない,朴憲永らの指導者は北朝鮮に移っており,そこから南の地下運動を指導しながら,北朝鮮内閣の枢要の地位にも就いていた(朴憲永は副首相兼外相)。なお,ソ連軍は48年末までに撤収し,国防の主体は48年2月8日に創設された朝鮮人民軍が担った。…
※「朴憲永」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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