日本大百科全書(ニッポニカ) 「東市来」の意味・わかりやすい解説
東市来
ひがしいちき
鹿児島県西部、日置郡(ひおきぐん)にあった旧町名(東市来町(ちょう))。現在は日置市の北部を占める。旧東市来町は1937年(昭和12)町制施行。町名は古代、市来院の東半を占めることによる。2005年(平成17)伊集院(いじゅういん)町、日吉(ひよし)町、吹上(ふきあげ)町と合併、市制施行して日置市となった。旧町域の大部分はシラス台地上にあるが、西部には吹上浜(ふきあげはま)砂丘と江口蓬莱(ほうらい)とよぶ海食崖(がい)が連なる。JR鹿児島本線と国道3号、270号が通じる。中世まで市来氏が鶴丸城に拠(よ)り、近世は島津氏の直轄領で野牧(のまき)が置かれた。主産物はタバコ、スイカ、茶などで、江口漁港の煮干しも有名。美山(みやま)(旧、苗代川(なえしろがわ))は慶長(けいちょう)年間(1596~1615)以来の薩摩焼(さつまやき)の本場で、朝鮮伝来の民陶的色彩を伝え、日常食器類から芸術品まで産出する。稲荷神社(いなりじんじゃ)境内のシイの木に寄生する顕花植物ヤッコソウ発生地は国指定天然記念物。国道3号沿いに硫黄(いおう)泉の湯之元温泉があり、行楽地としてもにぎわう。
[白石太良]
『『東市来郷土誌』(1978・東市来町)』