杵屋(読み)キネヤ

デジタル大辞泉 「杵屋」の意味・読み・例文・類語

きねや【杵屋】

長唄三味線方の家名貞享元禄(1684~1704)ごろに始まり現代に至る。諸派に分かれて各々が家元を名のり、六左衛門・六三郎・勝三郎・勘五郎・喜三郎・弥三郎・弥十郎・佐吉・正次郎・六四郎・栄蔵などの家がある。

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精選版 日本国語大辞典 「杵屋」の意味・読み・例文・類語

きね‐や【杵屋・稀音家】

  1. [ 1 ]
    1. [ 一 ] ( 杵屋 ) 長唄三味線方の屋号の一つ。元祿年間(一六八八‐一七〇四)初世杵屋勘五郎が上方から江戸にくだって江戸長唄を開いた(「杵屋系譜」)といわれるが確証はない。六左衛門に代表される宗家の植木店(うえきだな)派の他、佐吉家、六三郎家、正次郎家など多くの分派がある。
      1. [初出の実例]「大さつまは、長哥になり、女筆指南は、杵屋(キネヤ)にまかされ」(出典:洒落本・虚誕伝(1775)序)
    2. [ 二 ] ( 稀音家 ) 長唄三味線方の家名。杵屋の分派。一一世杵屋六左衛門(根岸の勘五郎)が稀音家照海と名のったに始まり、次いで明治四一年(一九〇八)六世杵屋三郎助が稀音家浄観と改名、さらにその子三世杵屋六四郎が大正一五年(一九二六)二世稀音家浄観を継ぎ、門弟一同も稀音家と改姓させて独立したもの。
  2. [ 2 ] 〘 名詞 〙 ( 杵屋 ) 江戸長唄の総称。杵屋物。
    1. [初出の実例]「翌(あしたは)杵屋(キネヤ)のさらひがあらア」(出典:滑稽本浮世風呂(1809‐13)前)

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改訂新版 世界大百科事典 「杵屋」の意味・わかりやすい解説

杵屋 (きねや)

長唄三味線方の姓。現在では唄方でこの姓を名のる者もいる。稀音家,杵家とも書かれる。〈杵屋〉が最も古く,《杵屋系譜》によると始祖は初世杵屋勘五郎,元和年間(1615-24)に兄とされる猿若勘三郎(中村勘三郎。中村座の祖)とともに京都から江戸に下った。3代目の2世杵屋勘五郎(杵屋の3代目,勘五郎の2世)は長唄三味線の始祖といわれ,それ以後,杵屋を名のる長唄三味線方は多くの支流生み,明和期(1764-72)以後,長唄界では圧倒的な勢力をもつに至った。現在,宗家の杵屋六左衛門をはじめ,栄蔵(杵栄派),勝三郎(杵勝派,勝派),喜三郎,佐吉(杵佐派,佐門),正次郎,弥三郎,六三郎(池之端派)など,それぞれ家元として一門を擁している。〈稀音家〉は11代杵屋六左衛門の別号の稀音家照海にはじまる。その名前養子6世杵屋三郎助(一時,勘五郎を名のる)が1908年に稀音家浄観と改め,その子3世杵屋六四郎が1902年4世吉住小三郎と研精会を結成し,26年に姓を稀音家と改めた。現在,その子4世稀音家六四郎の一門はすべて稀音家を名のっている。〈杵家〉は三味線文化譜の考案者である4世杵屋弥七が,27年に杵家と改め,さらに30年以後,〈杵家〉を〈きねいえ〉と呼ぶようになった。
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デジタル大辞泉プラス 「杵屋」の解説

杵屋

株式会社グルメ杵屋レストランが展開するうどん屋のチェーン

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