松果体(読み)しょうかたい

精選版 日本国語大辞典 「松果体」の意味・読み・例文・類語

しょうか‐たい ショウクヮ‥【松果体】

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デジタル大辞泉 「松果体」の意味・読み・例文・類語

しょうか‐たい〔シヨウクワ‐〕【松果体】

脊椎動物脳梁のうりょうの後端上部から突出している松かさ状の小器官生体リズムに関係するといわれる。松果腺

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「松果体」の意味・わかりやすい解説

松果体
しょうかたい

脊椎(せきつい)動物の間脳上蓋(じょうがい)から上方に伸びる袋状の突起で、動物の種類によって機能と構造に違いがあり、上生体(じょうせいたい)、松果腺(せん)などの語も使われる。下等脊椎動物の松果体は副松果体を伴う。この複合体は、無尾両生類では前方に伸び、頭骨の外に出て前頭器官となる。またトカゲなどの爬虫(はちゅう)類ではレンズと網膜構造を備えた顱頂眼(ろちょうがん)(頭頂眼)を形成する。鳥類哺乳(ほにゅう)類では副松果体はなくなり、中実の器官となる。哺乳類ではさらに松果体柄(へい)もなくなる。

 機能としては、両生類、爬虫類など下等脊椎動物の松果体には光受容能があり、網膜にある光受容細胞と似た細胞が認められる。鳥類以上になるとこうした光受容能は失われ、内分泌腺細胞となる。鳥類や哺乳類の松果体細胞にはセロトニンメラトニンの含量が多く、松果体に特有なメラトニン量は、夜間に多く昼間に少ない。このような日周性リズムがあるため、松果体は生物のリズムに深い関係があると考えられている。

[和田 勝]

ヒトの松果体

大脳の第三脳室の後上端壁から後方に突出し、視床枕(ちん)、上丘、脳梁(のうりょう)膨大に囲まれた陥凹部に位置している。解剖学的には間脳の視床上部に属している。松果体は、昔、デカルトが精神の座と考えた部分で、数種の細胞から構成される内分泌腺の一種とされているが、その働きは明確でない。形は扁平(へんぺい)な松の実状で長さ8ミリメートル、径5ミリメートルほどの小体である。第三脳室に付着する柄の部分は、第三脳室に向かって背側板と腹側板に分かれ、背側板は手綱(たづな)交連に、腹側板は後交連に続く。松果体は脳軟膜に覆われているが、この軟膜から血管と神経線維が松果体組織内に入り込む。松果体は7歳くらいまではよく発育しているが、青年期になると組織学的には退行傾向を示す。成人では石灰化物が球状の凝固塊として実質中にたまり、年齢とともに増加する(これを脳砂という)。この石灰化物は石灰塩類とマグネシウム塩類を含み、X線を用いると明瞭(めいりょう)に見えるため、放射線医学では頭蓋(とうがい)の基準点として利用される。松果体にはセロトニン、メラトニンなどの物質が含まれているが、メラトニンは性腺刺激ホルモン放出を抑制し、皮膚の色を白くするという。また、松果体の組織が破壊されると性的早熟(早発性思春期)と性腺肥大が現れるという。さらにヒトの松果体のメラトニンとセロトニンの量は、他の動物と同様に明暗の変化に伴って日周リズムを示すといわれる。

[嶋井和世]


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百科事典マイペディア 「松果体」の意味・わかりやすい解説

松果体【しょうかたい】

上生体,松果腺,松果器官とも。脊椎動物の間脳背面にある内分泌腺。哺乳(ほにゅう)類以外では光受容器でもある。松果体ホルモンであるメラトニンは両生類・魚類ではメラニン色素を凝集させ体色を白くする作用をもつが,現在では光周期情報を伝えるのがおもな役割と考えられている。哺乳類ではメラトニンは生殖腺の発達を制御するホルモンと考えられている。ヒトでは,間脳の第3脳室の上壁最後部から後上方に突出する0.2gほどの小体。7歳くらいまではよく発達し,内部に松果細胞という腺細胞様のものが集まる。年齢が進むと石灰化が起こり脳砂というクワの実状の凝固物が多数現れる。
→関連項目色素細胞

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世界大百科事典 第2版 「松果体」の意味・わかりやすい解説

しょうかたい【松果体 pineal body】

上生体epiphysis,松果腺pineal gland,松果器官pineal organともいう。松果体は脊椎動物の間脳背面に突出する内分泌腺の一種である。鳥類以下の下等脊椎動物では松果体は頭骨のすぐ下に位置していて,その前端の腺部のほかに後半部は細長い松果体茎よりなるのが特徴である。これによって松果体は大脳の背面に沿って前方へのび,頭部の皮膚を通過する外界の光を感受することができる。光感受能は腺部にある視覚細胞類似の微細構造によると考えられている。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「松果体」の意味・わかりやすい解説

松果体
しょうかたい
pineal body

左右大脳半球の間にある卵形の小体。内分泌器官の一つで,視床の上部に属している。ノルアドレナリン,ヒスタミンなどのほかメラトニンと呼ばれるホルモンを分泌する。メラトニンは抗性腺作用,成長ホルモン抑制作用,プロラクチン分泌促進作用など視床下部-下垂体系の抑制作用を示す。松果体は,第3の眼ともいわれるように,下等動物では光を感じる器官で,動物の日周運動に関係あるものとされている。

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栄養・生化学辞典 「松果体」の解説

松果体

 松果腺ともいう.内分泌腺の一つで,脳内にあり,メラトニンの分泌などを行う.

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世界大百科事典内の松果体の言及

【間脳】より

…下葉の後方には下垂体および血管に富んだ血管囊がつき,血管囊saccus vasculosusは深海魚でよく発達しているため水圧を感ずると考えられる。間脳の上面には松果体以外に,ムカシトカゲなどでは顱頂(ろちよう)眼がある。鳥類以下の動物の間脳についての実験的研究は少なく,個々の部分について哺乳類のどれに対応するかなどについては今後の解明がまたれる。…

※「松果体」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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