男性ホルモン、女性ホルモンの分泌による二次性徴の成熟が、早い年齢で起こってしまう病気です。
女子では、乳房が少しでもふくらんできた時が思春期の開始ですが、乳房の発育が7歳6カ月以前に起こってしまった時、思春期早発症の可能性が高いといえます。乳房発育だけがみられるときは、一時的な女性ホルモンの分泌によると考えられる乳房早期発育症との区別が必要です。
男子では、
末梢性の場合は、性腺または
性ホルモンが早期に分泌されることにより、成長のスパート(急激な進行)が起こります。成熟が進むと、陰毛の発育、男子では声変わり、女子では月経が認められます。原因が脳腫瘍による場合は、腫瘍の圧迫症状による頭痛・
未治療で放置すると、骨年齢が促進して
中枢性思春期早発症の場合は、性腺刺激ホルモンと性ホルモンの基礎値の上昇とともに、LHRH(
末梢性思春期早発症の場合は、性ホルモンの上昇は認められますが、性腺刺激ホルモンの分泌は抑制されています。
2歳以前に発症する思春期早発症は、過誤腫またはマックキューン・オルブライト症候群によるものが多く診断されます。腫瘍の場合は、CTまたはMRIによる画像診断を必要とします。
一過性の女性ホルモンの分泌により、乳房発育(乳房早期発育症)は1歳前後や6~7歳にみられることが多く、思春期早発症との区別を必要としますが、通常は成長率の促進や骨年齢の促進は認められず、性腺刺激ホルモンの上昇も認められません。経過をみていると、自然に乳房が退縮していくものがほとんどですが、何回も繰り返すこともあります。この場合は、自律性卵巣嚢腫(のうしゅ)を考える必要があります。また、自律性卵巣嚢腫の多くは、思春期早発症に移行していくので、注意が必要です。
末梢性思春期早発症の場合は、原因の腫瘍などに対する治療が第一です。過誤腫は中枢性思春期早発症を示しますが、多くの場合は摘出手術を必要としません。
中枢性思春期早発症は、LHRHアナログという薬剤で選択的に性腺刺激ホルモンの分泌を抑えます。月1回の皮下注射です。多くの場合、著しい効果を示し、二次性徴の進行停止・退縮がみられ、骨年齢の進行が緩やかになります。
低年齢で乳房が大きくなってきた場合や、急に背が伸びてきた場合には、小児内分泌専門医に診てもらってください。
田中 敏章
思春期早発症とは、年齢に比べて早期に第二次性徴が認められる病気です。男児では9歳未満で精巣、
一方で、下垂体性ゴナドトロピンとは関連がなく、腫瘍などから分泌される性ホルモンなどの上昇によって発症するものを、
男児では精巣の増大、陰茎や恥毛の発育がみられ、女児では乳房の
骨年齢の測定やホルモン検査、画像検査による腫瘍の検索が必要になります。
真性思春期早発症のなかで、器質的な脳疾患が原因の場合や仮性思春期早発症の場合は、腫瘍摘出などの原疾患の治療が優先されます。真性思春期早発症のなかで、特発性や手術不能な場合は、ゴナドトロピン分泌抑制作用のあるゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)誘導体を投与することで、月経の停止と骨年齢の進行防止を図ります。
菅原 明
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報
正常児童と比較して異常に早期に二次性徴が発現した場合をいう。性早熟症とも呼ばれる。一般に8~10歳以前に性早熟が現れた場合をさす。身長,体重の著しい増加とともに,男子では陰茎,睾丸の発達,変声,恥毛,腋毛の発生がみられ,骨年齢bone age(骨の骨化つまり成熟度によって定められる年齢)が高まるが,アンドロゲンの作用により骨端線の閉鎖が起こり,早期に身長増加は停止する。女子の場合,乳房の発達,恥毛,腋毛の発生,性器出血,骨年齢の増加がみられ,エストロゲンの作用による骨端線閉鎖もみられる。子宮出血は無排卵性子宮出血から,しだいに規則的となり,排卵も起こるようになる。
女児にみられる原因不明のものが最も頻度が高く,特発性思春期早発症と呼ばれる。中枢神経系になんらかの異常があり,これに続発して起こるものは脳性(あるいは続発性とも神経性とも)思春期早発症と呼ばれる。このうち脳腫瘍とくに松果体腫瘍の場合が多い。また,片側性の繊維囊腫性骨病変と皮膚の褐色色素斑に,女児の場合しばしば性早熟を伴うことがあり,マッキューン=アルブライト症候群McCune-Albright syndromeまたは単にアルブライト症候群と呼ばれる。以上の場合の性早熟を真性思春期早発症と呼ぶ。これに対して仮性思春期早発症と呼ばれるものでは,脳下垂体性ゴナドトロピンが抑制されるようなものが含まれる。これらには先天性副腎過形成によるものや,睾丸,卵巣,副腎などの腫瘍によるものがあり,アンドロゲンやエストロゲンが上昇していることが性早熟の原因である。それ以外に,原発性甲状腺機能低下症や,肝臓癌のようなゴナドトロピン(HCG)産生腫瘍に伴うものもみられる。時として,乳房のみ,あるいは恥毛のみ異常に発達する場合もみられる。
執筆者:村上 徹
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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[思春期の医学]
次に頻度の高い病気やとくに注意しなければならない異常を簡単に述べる。(1)思春期早発症(性早熟症) 8~9歳以前に二次性徴が出現し,女性では月経をみるものがある。この病気は初めは身体発育が早いが,まもなく停止して,結果的には低身長に止まる。…
…一般的には,精神的,肉体的な成熟の度合が漠然と1~2年早めであることをいうが,これは単なる発育の個体差で病的なものとはいえない。しかし,幼児に大人の肉体的徴候が現れるような性早熟は病的なもので,思春期早発症とよばれる。そのほかに数学や音楽など科学的・芸術的才能に非常に早期から秀でるような場合は,早熟というよりむしろ天才とよばれる。…
※「思春期早発症」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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