大脳半球の大脳縦裂の底部にあり,左右の大脳半球の間,とくに新皮質を相互に連絡している神経繊維の集団(交連繊維系に属し,ヒトで約2億本あるという)で,半球間の情報交換を行い,それにより個体が心的統合を保つうえで大きな役割を果たしている。脳梁は哺乳類の真獣類(完全胎生)以上に現れ,単孔類(卵生)や有袋類(早期胎生で袋内発育)では脳梁を欠いており,左右の新皮質は前交連によってのみ連絡されている。ヒトの脳の正中矢状断面(正中線で背腹方向に切った断面)をみると,脳梁は四つの部分に区分された名称をもつ。すなわち,終板の上前方に続く部分(脳梁吻),それに続き膝状に強く後下方に屈曲した前端部(脳梁膝),これより後方に水平に走る部分(脳梁幹),著しくふくれた形の後端部(脳梁膨大)である。脳梁全体の形はこの断面で見ると〈つ〉の字形を示しており,その姿はちょうど大脳という屋の棟を支える太い横木,すなわち梁(はり)に似ている。なお,脳梁から皮質に向かって放散する交連繊維を脳梁放線とよび,前頭部および後頭部への放散部分をそれぞれ小鉗子および大鉗子といい,ともにU字形に湾曲して走っている。
脳梁は初めは,海馬交連(脳弓交連)のすぐ吻側の終板上部を左右に走る小神経繊維の束として発生する。さらに新皮質の発育にともない繊維の量が多くなるので,脳梁は成長・増大するが,まず脳弓に沿って前上方に,次いで後方に急速に発達していく。脳梁繊維の起始細胞や繊維終末の分布に関しては,その密度に著しい部位的差異がみられるが,これは大脳皮質の細胞構築が一様でないことの反映と思われる。一般的にいって,大部分の起始細胞は皮質第Ⅲ層に集中しているが第Ⅰ層を除く皮質全層に分布する。また,その繊維終末はすべての層に分布するが第Ⅰ~Ⅲ層に多く終わる。
先天的に脳梁の一部または全部を欠きながら一見ふつうに生活する例もあり,昔,知的能力との関連性が考えられたがはなはだ疑問である。近年,左右の大脳半球における形態的および機能的な非対称性や特殊化の存在が明らかになり注目されるようになった。右脳と左脳との間の刺激伝達の最大かつ重要な交連繊維系としての脳梁の働きは今後,ヒトの脳梁欠損例や切断手術(脳梁切截術といわれ,以前てんかんの治療のために行われた)の例を対象にした研究を通じて,ますます明らかにされるであろう。
→左右優位 →脳
執筆者:川村 光毅
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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