19世紀に多くなった料理屋の料理職人のこと。関西では板場(いたば)と称する。もともとは年季を積んだ料理場での差配役のことであった。15世紀に生まれた庖丁師(ほうちょうし)という魚鳥を料理する職人は宴会の席で客の前で料理する出職(でしょく)であり、なま物の料理法にいくつかの流派ができた。また、精進(しょうじん)物の料理職人の調菜(ちょうさい)は17世紀には刻肴師(きざみさかなし)となった。18世紀には庖丁師は刻肴師の技術を取り入れ、いっさいの料理の担い手となった。板前とは、まな板の前にいるからである。板前は自分で店を開くか、料理屋に雇われるか、とにかく居職(いじょく)となった。徒弟制による幾段かの技術階層、部屋制による職場の規制があった。刺身包丁一つに柳刃二つを紫縮緬(むらさきちりめん)の袱紗(ふくさ)に包み、他人のものは使わないというのが板前気質であった。近代でも、日本料理はこうした組織と意識によって技術が保持されていた。西洋料理の影響により、座業から立ち作業となった。現代では法律上、西洋料理職人(コック)とともに調理師となった。
[遠藤元男]
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…安永~天明(1772‐89)ころ全盛を誇った江戸洲崎の升屋宗助,それに対抗した樽屋三郎兵衛,享和(1801‐04)ころから台頭した八百善の八百屋善四郎などは,その料理が一部特権階級だけのものだったとしても,日本料理の味覚の質を向上させたといえる。現在の日本では和風料理店の料理人を板前と呼んでいる。まないたに向かう人の意で,このことばは江戸後期から使われ始めた。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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