精選版 日本国語大辞典 「果」の意味・読み・例文・類語
は・てる【果】
〘自タ下一〙 は・つ 〘自タ下二〙
[一]
① 限界に行きつく。終わる。終わりになる。
※万葉(8C後)一〇・一八四三「昨日こそ年は極(はて)しか春霞かすがの山にはやたちにけり」
② なくなる。失(う)せる。
③ 死ぬ。
※源氏(1001‐14頃)薄雲「ともし火などの消え入るやうにてはて給ひぬれば」
※浮世草子・本朝桜陰比事(1689)五「此ままは果(ハテ)ぬといふて三度首をさげて」
※宇津保(970‐999頃)内侍督「ものまゐりなどする程に、わがめとしりはて給ぬ」
※源氏(1001‐14頃)桐壺「ともかくもならむを御覧じはてむとおぼしめすに」
か クヮ【果】
[1] 〘名〙
① 果実のこと。くだもの。
※梵舜本沙石集(1283)二「譬ば長者の田に種子を蒔、水をひき、時に随て、つくろひて後、此種子を長ぜざれといはねども、必ず其果を得るが如し」 〔周礼‐地官・場人〕
※今昔(1120頃か)三「罪を作れば定(さだめ)て果を感ずる也」 〔徐陵‐東陽双林寺傅大士碑〕
③ 仏教の真理を悟ること。悟りの境地。
※浮世草子・傾城禁短気(1711)三「勒(つとめ)の果(クヮ)に至るものは、少女なれ共心至り」
④ 勇気があること。
※性霊集‐三(835頃)贈伴按察平章事赴陸府詩「君智而謀、果而恵」
⑤ 石・斛(こく)の異称。
※経覚私要鈔‐嘉吉三年(1443)六月九日「布施事多田色々歎申、廿果銭沙汰、今十果事、来秋可二沙汰一之由捧二請文一了」
[2] 〘接尾〙 くだもの類を数えるのに用いる語。
※今昔(1120頃か)一三「大なる梨子・柿〈略〉一二果を食つるに」
はて【果】
〘名〙 (動詞「はてる(果)」の連用形の名詞化)
① はてること。物事の終わり。しまい。末。最終。最後。
※貫之集(945頃)一〇「いろみえでゆきつもりたる身のはてやつひにけぬべきやまひなるらん」
※洒落本・初葉南志(1780)「追付(おしつけ)両(りょう)芝居が果(ハテ)でござりませうが」
② 人の死後の忌(いみ)や喪の終わり。また、その時に行なう仏事。四十九日、また一周忌。
※大和(947‐957頃)九「桃園兵部卿宮うせ給て、御はて九月つごもりにしたまひけるに」
③ いちばんはしの所。
※古今六帖(976‐987頃)五「東路のみちのはてなる常陸帯のかごとばかりもあひみてし哉」
④ 人の境遇の最後に行きついたところ。ふつう悪くなった場合にいう。おちぶれはてた姿。末路。なれのはて。
※史記抄(1477)五「太后は、邯鄲の傾城のはてぢゃほどに、不調で淫乱なぞ」
⑤ 一年の最後の月。一二月。はての月。
※俳諧・俳諧勧進牒(1691)「果の朔日(ついたち)の朝から 節季候の来れば風雅も師走哉」
はた・す【果】
〘他サ五(四)〙
[一]
① なしとげる。目的を達する。きまりをつける。
※書紀(720)武烈即位前・歌謡「大太刀を 垂れ佩(は)き立ちて 抜かずとも 末婆陀志(ハタシ)ても 逢はむとぞ思ふ」
※徒然草(1331頃)五二「年比思ひつること、はたし侍りぬ」
② 神仏への願い事がかない、願ほどきのお礼参りをする。
※源氏(1001‐14頃)若菜下「住吉の御願かつがつはたし給はむとて」
③ 結果を得る。物事を終える。事を収める。
※風姿花伝(1400‐02頃)七「しかれば、稽古する所の因疎かなれば、果を果す事も難し」
④ 命を終わらせる。殺す。
※玉塵抄(1563)一七「周の成王の紂をはたされた時にたすけられたぞ」
[二] 動詞の連用形に付けて補助動詞として用いる。すっかり…し終える。…し尽くす。
※日葡辞書(1603‐04)「ヨミ fatasu(ハタス)。〈略〉カキ fatasu(ハタス)」
おお・せる おほせる【果】
〘他サ下一〙 おほ・す 〘他サ下二〙 (動詞の連用形について) その動作をすっかりやり終える。また、みごとにやりとげる。果たす。とげる。
※落窪(10C後)一「いとよし。よく縫ひおほせたり」
※浮雲(1887‐89)〈二葉亭四迷〉三「一生中で尤も大切な時、能く今の境界を渡り課(オホ)せれば」
はか
し【果】
〘形シク〙 はかばかしい。
※漢書列伝綿景抄(1467頃)「はかしうも無事を本にするぞ」
は・つ【果】
〘自タ下二〙 ⇒はてる(果)
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