翻訳|karyotype
遺伝情報の担い手であるDNAは生物の細胞中では主に染色体に存在している。一つの細胞に含まれる染色体の数および形は生物の種や系統によって一定していて,種の類縁関係を判定する細胞学的な指標となりうる。体細胞中にはそれぞれの両親に由来し,同じ対立遺伝子をもち同じ形状をした1対の染色体がある(性染色体は例外)。これを相同染色体homologous chromosomesという。一つの種の体細胞に含まれる相同染色体を識別し,染色体の形や大きさの順序に従ってこれを配列したものをその種の核型といい,このように核型を決定することを核型分析という。ところで近縁の生物群でおのおのの種の染色体数を比較すると,しばしば倍数性がみられる。例えば二倍種(半数染色体数n=7),四倍種(n=14),六倍種(n=21)といった場合で,二倍種の半数染色体の7本をこの生物群の染色体の基本数といいxで表す。そして,二倍種は2x,四倍種は4x,六倍種は6xで表される。この基本数に相当する核型を特に基本核型と呼び,その核型分析を特に基本核型分析という。これによって種のゲノム構成を明らかにできるので,この分析法は種間および属間の系統分類学的な類縁関係ならびに系統分化の様相を解明する有力な一手段と考えられる。
核型を表示する方法は,研究に用いた生物や研究者によって異なるが,直接的表示と数量的表示が用いられてきた。現在もっともよく用いられる表示法は染色体の動原体の位置による表し方である。体細胞分裂中期にみられる染色体の形は動原体の位置によってつぎの4種に分類される(図参照)。中部動原体染色体,次中部動原体染色体,次端部動原体染色体,および端部動原体染色体である。数量的に核型を表示する場合や動原体の位置を正確に示すためには,動原体を中心に染色体の左右の腕の長さを測定し,長腕の長さ/短腕の長さの比で示す。また普通の動原体のほかに,仁の形成に関与する二次狭窄(きようさく)をもつ染色体とその数は,核型を特徴づける一つのすぐれた指標となる。
執筆者:阪本 寧男
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