日本大百科全書(ニッポニカ) 「エルミート」の意味・わかりやすい解説
エルミート
えるみーと
Charles Hermite
(1822―1901)
フランスの数学者。ロレーヌのデューズで生まれたが、6歳のときに一家とともにナンシーに移住、ここのリセ(中等教育機関)へ入学した。その後まもなくパリの「アンリ4世」という名のリセへ転校し、さらにエコール・ポリテクニク(理工科大学校)受験の準備のためにリセ「ルイ・ル・グラン」へ転校した。この学校の数学教師リシャールLouis-Paul-Émile Richard(1795―1849)はエルミートが大数学者になることを予見して、特別の指導をした。1842年にエコール・ポリテクニクに入学したが、足が不自由であったので、ここを卒業しても先の見込みがないといわれて、1年在学しただけで退学した。しかし在学中にヤコービと文通して、アーベル関数を研究していた。そして、n個の複素数を変数とする関数は2n個よりも多くの周期をもつことができないことを証明したが、皮肉にも、この論文によってエコール・ポリテクニクの教員に採用され、さらに1869年にパリ大学教授となった。
エルミートの研究は、数学のあらゆる分野にまたがっていたが、すべてがつながっていた。たとえば五次の代数方程式は楕円(だえん)関数を用いて解けることを示している。オイラーの導入した自然対数の底として用いられているe、すなわち級数
の和が超越数であることを示したことは数学史に特記すべきことである。そのほか輝かしい業績を残した。
[小堀 憲]